愛のレシピ

公開日: ちょっと切ない話 | 家族 | 心温まる話 |

炊き込みご飯

私が子供の頃、母が作る炊き込みご飯は私の心を温める特別な料理でした。

明言することはなかったが、母は私の好みを熟知しており、誕生日や記念日には必ずその料理を作ってくれました。

高校時代には、その習慣に少し飽きてしまい、「またか」と思うこともあった。

しかし家を出てからも、たまの帰省の際に母はいつも「炊き込みご飯作ったよ」と迎えてくれました。

ある日、予期せぬ電話が会社に届き、私は急いで病院に向かいました。

そこには、既に多くの親戚が集まっていました。

意識を失っている母の手を握ると、彼女の唇がわずかに動きました。

彼女が伝えたかったのは、

「炊き込みご飯を作ったよ、たくさん食べて」

という言葉だったのです。

それが、私への彼女の最後のメッセージでした。

現在、私の娘が「ママのスパゲッティー大好き!」と笑顔で食事を楽しむ姿や、妻が娘を幸せそうに見つめる光景を目にする度、母の炊き込みご飯の味と愛を思い出すのです。

関連記事

親子

失ってもなお、愛している

家内を亡くしました。 お腹には、二人目の子どもがいました。 その日、彼女は病院へ向かうため、タクシーに乗っていました。けれど途中で、居眠り運転のトラックと正面衝突。あまり…

青い花(フリー写真)

ママの棺

この間、1歳半の息子を連れて友人の家へ行った時に、友人の祖母から聞いた話です。 ※ 友人がちょうど1歳半の時、お母さんが癌になったそうです。 気付いた時にはもう手遅れで、一ヶ…

イチゴのショートケーキ(フリー写真)

イチゴショートと女の子

俺がケーキ屋で支払いをしていると、自動ドアが開いて、幼稚園児くらいの女の子が入って来た。 女の子は一人で買い物に来たらしく、極度の緊張からか、頬を赤く染め真剣な眼差しで店員に …

浜辺を走る親子(フリー写真)

両親は大切に

人前では殆ど泣いたことのない俺が、生涯で一番泣いたのはお袋が死んだ時だった。 お袋は元々ちょっと頭が弱くて、よく家族を困らせていた。 思春期の俺は、普通とは違う母親がむかつ…

寝ている猫(フリー写真)

飼い猫の最後の別れ

10年以上前、ひょんな切っ掛けで、捨てられたらしいスコティッシュの白猫を飼う事になった。 でもその猫の首には大きな癌があり、猫エイズも発症していて、 「もうあと一ヶ月ぐらい…

桜(フリー写真)

大切な5つの言葉

1. 今、辛い人はそのことで頭がいっぱいになるが、辛さや悩みはいつか必ず終わる。 終わることが分かっていれば、今の辛さも軽くなる。 過ぎてしまえば大したことなかっ…

天国(フリー素材)

天国のおかあちゃんへ

もう伝わらないのは解っているけど、生きている内に伝えられなかった事を今、伝えるね。 まずは長い闘病生活、お疲れ様。最後まで絶対に諦めなかったおかあちゃんの姿、格好良かったよ。 …

教室

丸坊主の誓い

中学生の弟がある日、学校帰りに床屋で丸坊主にして帰ってきました。 失恋したのかと尋ねると、小学校からの女の子の友達が久しぶりに学校に戻ってくるからだと教えてくれました。その女の…

母の手を握る赤子(フリー写真)

母の想い

彼は幼い頃に母親を亡くし、父親と祖母と暮らしていました。 17歳の時、急性骨髄性白血病にかかってしまい、本人すら死を覚悟していましたが、骨髄移植のドナーが運良く見つかり死の淵から…

カップル(フリー写真)

彼女からの涙の告白

彼女との同棲生活が始まって、すでに5年以上が過ぎていました。 そして今、私は彼女にプロポーズをしようとしています。 だけれども、緊張からうまく言葉が出てこないのです。 …