お金以上のもの
パパ、ママ、小学生の三姉妹の仲良し五人家族。
ある日、ママが交通事故で亡くなってしまいました。
慣れない家事にお父さんも奮闘。
タマゴ焼きを焦がしたり、洗濯物を皺だらけにしたり…。
失敗しながらも笑顔で幼い三姉妹を育てます。
そんなお父さんのささやかな楽しみは、お風呂に入りながら唄うこと。
いつも「カラオケボックスで思い切り唄いたいな~」と言っていました。
※
お父さんの誕生日の数日前、姉妹は三人で集めた貯金箱を持って、通学路の途中にあるカラオケボックスへ。
「予約できますか?」
受付に居た若い女性店員は、怪訝な顔で店長を呼びます。
この店長さん、いつも通学途中の三姉妹を見守っていました。
「お母さんは?」
「死んじゃった!お父さんしかいないの…」
「お父さんの誕生日会をしたいんです!」
現在と違い当時のカラオケボックスは高かったのです。
持参したお金では到底足りません。
全てを悟った店長は、
「解りました。協力しますよ」
と言ってくれました。
※
誕生日会当日、早くから個室を貸してくれたので、三姉妹揃って飾り付け。
時間が来たのでお父さんを呼びに行く三姉妹。
幼い三姉妹とお父さんの誕生日パーティーが始まります。
お父さんも唄ってビールを飲んで…。
三姉妹もアニメの曲を唄ったり、踊ったり、楽しい時間を過ごします。
※
パーティーが終わって帰り際、お父さんはフロントへ精算に行きます。
お父さんも、三姉妹の持参した金額で不足なのは、もちろん知っていたのです。
そこで対応した店長さん。
「お会計は終わっています。娘さんから頂きました」
「足りないでしょう?」
「いいえ!充分頂きました。そしてお金以上のものを私たちも娘さんから頂きました。こちらこそありがとうございます」
楽しそうに帰る家族を見送った後、店長と従業員は号泣。
お父さん、三姉妹、店長と従業員、みんな幸せな時間を過ごしたそうです。