欲しかったファミコン
俺の家は母子家庭で貧乏だったから、ファミコンが買えなかった。
ファミコンを持っている同級生が凄く羨ましかったのを憶えている。
小学校でクラスの給食費が無くなった時など、
「ファミコン持ってないやつが怪しい」
なんて、真っ先に疑われたっけ。
「貧乏の家になんか生まれて来なきゃ良かった!」
と悪態をついた時の母の悲しそうな目、今でも忘れられないなぁ…。
※
どうしてもファミコンが欲しくて、中学の時に新聞配達して金を貯めた。
これでようやく遊べると思ったんだけど、ニチイのゲーム売り場の前まで来て買うのをやめた。
その代わり妹にアシックスのジャージを買ってやった。
今まで俺のお下がりを折って着ていたから。
母にはハンドクリームを買ってやった。いつも手が荒れていたから。
※
去年の結婚式前日、母から錆びたハンドクリームの缶を、大事そうに見せられた。
泣いたね…。
初めて言ったよ。「生んでくれてありがとう」って。