母のエプロン

公開日: 家族 | 心温まる話 |

エプロン(フリーイラスト)

社会人になって初めて迎えた母さんの誕生日。

「いつもありがとう」という言葉を添えて、プレゼントを渡したかった。

でも照れ臭いし、もし選んだプレゼントが気に入ってもらえなかったらと思うと怖かった。

それで、

「選ぶのめんどいから」

と嘘を吐いてデパートへ連れて行き、

「何でもいいから適当に買えよ」

とぶっきらぼうに言った。

そしたら、

「高いエプロンだけどいい?」

とおずおずと見せに来て、値札を見たらたったの三千円。

「こんな安物かよ」

とひったくって後ろを向き、泣きそうな顔を見られないようにレジに走った。

服でもバックでも、他に何でもあるだろ。財布の中に給料全部入れてきたんだぞ!

そう思うと涙が出たけど、トイレで急いで顔を洗い、素知らぬ顔で袋を渡した。

そしたら、母さんが嬉しそうにその袋を抱き締めたのを見て、また泣きそうになった。

今でも帰る度に、そのエプロンを着けて飯を作ってくれて、ありがとう。

ほんと美味いよ。世界一だ。

いつも素直になれなくてごめん。

マザコンでもいいよ、母さん大好きだ。

関連記事

リビング

弟の物語が変えた家族

私の家族は、父、母、私、そして弟の四人家族です。弟は私より十二歳も年下で、その当時はまだ六歳でした。とても可愛い弟です。しかし、私は遊び盛りで、家にいれば父と母が喧嘩をしていることが…

サイコロ

おばあちゃんの願い

子どもの頃、家庭の事情でおばあちゃんの家に預けられた俺。見知らぬ土地に来て間もないこともあり、友達はおらず、孤独を感じていた。 その寂しさを紛らわせるため、ノートに自分で考えた…

手紙

君の手紙、僕の手紙

先日、小学5年生の娘が何かを書いているのを見つけた。 それは、亡き妻への手紙だった。 「ちょっと貸して」 そう言って、そっと中身を見せてもらった。 まだ拙い文…

母と娘(フリー写真)

強いお母さん

母さんが亡くなってから6年経つのに、まだまだ寂しがりやの私です。 昔の携帯を見つけたの。受信箱に母さんからのメール。 「まだ帰れない?」 「鍵忘れてるよ^^」 …

桜

お兄ちゃんの約束

私は小学1年生の息子と、幼稚園年中の息子を持つ二児の母です。下の息子には障害があり、来年の就学が大きな課題となっています。 今年に入って、上の息子がニコニコしながら言いました。…

秘密

豊かさの秘密

アメリカのとある大富豪が、十人のエージェントにある事を世界中で調査するように命じました。 それは「貧乏人が必ず金持ちになる方法はあるか」「金持ちが金持ちで居続けることができる方…

猫

小さな隊長たち

子供が外に遊びに行こうと玄関を開けたとたん、突如、猫が外に飛び出して行ってしまった。 探してやっと見つけたとき、愛する猫はもうかわり果てた姿になっていた。 私はバスタオル…

戦闘機

戦場の軍医と従兵の絆

先日、私は大伯父の葬儀に参列しました。読経の声が静かに流れる中、私は大伯父がかつて語った、唯一の戦争の話を思い出していました。 医師であった大伯父は軍医として従軍し、フィリピン…

父と娘

強い人

母は、強い人だった。 父が前立腺癌だと判った時も、入院が決まった時も、葬式の準備の時も、私たち子どもの前で一度も泣かなかった。 だからなのか、当時私はまるで映画を観ている…

家族の手(フリー写真)

いつかの日曜日

私が4歳の時、父と母は離婚した。 当時は祖父母と同居していたため、父が私を引き取った。 母は出て行く日に私を実家へ連れて行った。 家具や荷物が沢山置いてあって、叔母の…