大好きなパパへ
私の両親は私が小さい頃に離婚し、私はずっとお父さんと生きて来た。
お母さんとお父さん。
どっちに行こうか迷っていた時、お父さんは
「ここに残りなよ」
と言ってくれたね。
今思えば、あれが最後の我が儘だったね。
私の体調が悪い時は、不器用ながらも心配してくれたり。
私がイライラしてて八つ当たりした時も、いつもニコニコして理解してくれていた。
何かあるといつも笑っていて。冗談ばっかりで。馬鹿な事ばっかりで。我慢強くって。
あたしが母と喧嘩した時、頭撫でてくれて慰めてくれた事。全部大好きだったよ。
週一で好きなラーメン屋に通ったり、ファミレスで食べまくったり。
お互いお金がある時は外食ばっかしてたね。
お父さんと一緒に行く外食はとっても楽しかった。一番楽しみだった。
※
そんなある日。
貴方は倒れて病気しましたね。
入院した日から、あたしはお仕事しながら毎日お見舞に行った。
貴方は食事や煙草は勿論、水分までをも制限されていて、車椅子で病院内を散歩した時、ジュースを飲みたいって。
買ってあげたかったけど、ダメだよとしか言えなかった。
ご飯もろくに食べられず、苦しく寝ているばかりで。
段々衰えて行く姿を見るのが、苦しくて。
「退院したら美味しい物をまた食べに行こう」「パパが居ないお家、一人で寂しいよ」
って、そんな言葉しか掛けられなかった。
それでも段々と回復して行って、ご飯も沢山食べられるようになり、退院する日が決まった矢先。
寝ている間に息を引き取ったね。
何の苦もない。ただ、本当に寝ている顔で。
最初、何があったか解らなくて。触って、揺すって、冷たくて。
『何で?』
それしか頭になかった。
退院が決まって、やっとこのお家に帰って来る。
『もうこれで寂しくない!これからはゆっくりしてもらわなくっちゃ!』
と思っていたのに。
違う形で帰って来るなんて夢にも思わなくて。
ずっとずっと、狂ったように泣くしかできなかった。
※
私を一人にさせないで。
まだ話したい事、一緒に行きたい所、これからの人生、孫の顔。いっぱいいっぱい見せたいものがあったのに、一瞬でなくなってしまった。
そこからは真っ白の中、喪主を務めて、片付けをして、親戚同士で揉めて、忙しくて、挙げ句の果てには拒食症になって。
お父さんがやっていた事、真似して少しでも近付きたくて。
真似したら戻って来てくれるような気がして。
でも。
もう。
言葉を交わす事はないんだね。
もう。
お父さんと一緒に食べていたラーメンも食べれなくなっちゃって。
もう、ファミレスで食べていた量も食べられないよ。
それでも、
『お父さんと一緒なら食べれるかな?』
なんて思ったりして。
願いが叶うなら、少しでも一瞬でも、夢でもいい。
話さなくていいから、会って抱き締めて欲しいな。
パパ、ずっと大好きだよ。
お誕生日おめでとう。