愛のレシピ

公開日: ちょっと切ない話 | 家族 | 心温まる話 |

炊き込みご飯

私が子供の頃、母が作る炊き込みご飯は私の心を温める特別な料理でした。

明言することはなかったが、母は私の好みを熟知しており、誕生日や記念日には必ずその料理を作ってくれました。

高校時代には、その習慣に少し飽きてしまい、「またか」と思うこともあった。

しかし家を出てからも、たまの帰省の際に母はいつも「炊き込みご飯作ったよ」と迎えてくれました。

ある日、予期せぬ電話が会社に届き、私は急いで病院に向かいました。

そこには、既に多くの親戚が集まっていました。

意識を失っている母の手を握ると、彼女の唇がわずかに動きました。

彼女が伝えたかったのは、

「炊き込みご飯を作ったよ、たくさん食べて」

という言葉だったのです。

それが、私への彼女の最後のメッセージでした。

現在、私の娘が「ママのスパゲッティー大好き!」と笑顔で食事を楽しむ姿や、妻が娘を幸せそうに見つめる光景を目にする度、母の炊き込みご飯の味と愛を思い出すのです。

関連記事

桜

お兄ちゃんの約束

私は小学1年生の息子と、幼稚園年中の息子を持つ二児の母です。下の息子には障害があり、来年の就学が大きな課題となっています。 今年に入って、上の息子がニコニコしながら言いました。…

電話機

電話越しの陽だまり

結構前、家の固定電話が鳴った。 『固定電話にかけてくるなんて、誰だろう?』と思いつつ、電話に出ると、若い男の声がした。 「もしもし? 俺だけど、母さん?」 すぐにオ…

数式(フリー素材)

天才数学者の意志

人は彼のことを「神童」とも「天才」とも「未来を嘱望された若手数学者」とも形容する。 ただ一貫しているのは、彼の頭脳力と、それに劣らない人格に対する尊敬と敬愛だろう。 20…

野球道具(フリー写真)

野球と夢

一球投げる度、脱げそうになる帽子を被り直す。 岩瀬・真壁・筑波の連合チームの田中康太(筑波2年)は同点の七回、3番手でマウンドに上がった。 1点勝ち越されたが、味方が追い付…

手紙(フリー写真)

天国の妻からの手紙

嫁が激しい闘病生活の末、若くして亡くなった。 その5年後、こんな手紙が届いた。 どうやら死期が迫った頃、未来の俺に向けて書いたものみたいだ。 ※ Dear 未来の○○ …

カップル(フリー写真)

僕はずっと傍に居るよ

私は昔から、何事にも無関心で無愛想でした。 友達は片手で数えるほどしか居らず、恋愛なんて生まれてこの方、二回しか経験がありません。 しかし無愛想・無関心ではやって行けないご…

バー(フリー写真)

大好きな姉

20歳を迎えたその日、姉が雰囲気の良いショットバーに連れて行ってくれた。 初めてのバーに圧倒されている俺を見て、姉は 「緊張してんの? 何か子供の頃のアンタみたい」 …

夫婦の手(フリー写真)

私は幸せでした

文才が無いため酷い文になると思いますが、少し私の話に付き合ってください。 24歳の時、私は人生のどん底に居ました。 6年間も付き合って婚約までした彼には、私の高校時代の友人…

夫婦(フリー写真)

幸せなことは何度でもある

結婚5年目に、ようやく待ちに待った子供が産まれた。 2年経って子供に障害があることが判明し、何もかもが嫌になって子供と死のうと思った。 そしたら旦那がメールが届いた。 ※…

スマホ

傷つけて気づいた愛

私は4年間、妻を裏切り続けた。ネットで出会った女性との不倫関係に溺れていたのだ。彼女との関係は、私がずる賢く立ち回り、妻には秘密のまま続いていた。妻はいつも遅い帰宅にも笑顔で迎えてく…