傷つけて気づいた愛

公開日: ちょっと切ない話 | 夫婦 | 恋愛

スマホ

私は4年間、妻を裏切り続けた。ネットで出会った女性との不倫関係に溺れていたのだ。彼女との関係は、私がずる賢く立ち回り、妻には秘密のまま続いていた。妻はいつも遅い帰宅にも笑顔で迎えてくれる、優しい女性だった。

しかし、そんな不倫関係にも終わりが来た。彼女が新しい恋に落ち、私に別れを告げたのだ。独身の彼女に、何も言い返すことはできなかった。ただ、「良かったな」と強がって別れを受け入れた。

彼女との別れは思いのほか辛く、心に大きな穴が開いたような気がした。その寂しさを紛らわすために、これまで構ってやれなかった妻に、白々しく優しくするようになった。妻は久しぶりに見せる笑顔で、私の話に耳を傾けてくれた。

携帯メールを使わない妻に、私は教え込んだ。彼女からのメールが途絶えた寂しさを紛らわすためだった。妻からのメールを期待していながらも、自分の動機の不純さに呆れていた。

そしてある日、妻からの初メールが届いた。開いてみると、不器用な文章が並んでいた。妻の温かさと愛情が溢れるメッセージに、私は涙が止まらなかった。「初めてメエルします 線が引けない もつとちやんと、習ておけばよかた でも今はすごく幸せて感じかな」という言葉が、私の心を打った。

私は、これまで何をしていたのだろうと思った。自分の愚かさ、妻への愛おしさが混じり合い、涙が溢れた。この妻を、これから一生大切にしようと心に誓った。

関連記事

夫婦の後ろ姿

娘になった君へ

俺が結婚したのは、20歳のときだった。 相手は1歳年上の妻。学生結婚だった。 二人とも貧乏で、先の見えない毎日だったけれど、それでも毎日が幸せだった。 ※ 結…

父と娘(フリー写真)

娘から神様への手紙

私の4歳の娘が、字を教えて欲しいと頼んできました。 どうせすぐに飽きるだろうと思っていましたが、毎晩教えていました。 ある日、娘の通っている保育園の先生から電話がありまし…

手(フリー写真)

無償の愛

おじいちゃんは老いから手足が不自由で、トイレも一人で行くのは厳しい。 だから、いつもはおばあちゃんが下の世話をしていた。 おばあちゃん以外が下の世話をするのを嫌がったからだ…

窓辺(フリー写真)

失われた家族

妻と娘が一ヶ月前に交通事故で命を落としました。 独りで運転していた車が大破したそうです。 その知らせを受けたとき、私は出張先の根室にいました。 帰るのは一苦労でした…

猫の寝顔(フリー写真)

猫が選んだ場所

物心ついた時からずっと一緒だった猫が病気になった。 いつものように私が名前を呼んでも、腕の中に飛び込んで来る元気も無くなり、お医者さんにも 「もう長くはない」 と告げ…

太陽の光(フリー写真)

あなたらしく生きてください

高校時代に付き合っていた彼女の口癖だった言葉。 「やらないで後悔するより、やって後悔した方が良いんじゃない?」 別れた後も、何故か手紙のやり取りはしていた。 でも、あ…

一番近くにいた優しさ

一番近くにいた優しさ

私は昔から、何事にも無関心で、無愛想な性格でした。 友達は、片手で数えるほどしかいませんでした。 恋愛に至っては、生まれてこのかた、たったの二回。 ※ でも、…

沖縄のビーチ(フリー写真)

母の唯一のワガママ

「沖縄に行かない?」 いきなり母が電話で聞いて来た。 当時は大学三年生で、就活で大変な時期だったため、 「忙しいから駄目」 と言ったのだが、母はなかなか諦めない…

女性の後ろ姿

君がくれた、小さな勇気

初めて彼女に会ったのは、内定式のときだった。同期として顔を合わせた。 聡明を絵に描いたような人だった。学生時代に書いた論文か何かが賞を獲ったらしく、期待の新人として注目されてい…

花を持つ女性(フリー写真)

彼女の嘘

あなたは本当に俺を困らせてくれたよね。 あなたと付き合った日。 朝のバスでいきなり大声で、 「付き合ってください!」 そんな大声で言われても困るし。 と言…