変わらずそばに

カップル

事故に遭い、足が不自由になってしまいました。車椅子がなければ外に出ることも、トイレに行くこともままなりません。多くの友人が去っていきましたが、彼だけは事故前から変わらずにそばにいてくれました。

私は時に彼に八つ当たりをしてしまいました。物を投げつけたり、辛辣な言葉を浴びせたり、自ら命を絶とうとさえしました。自分がこの世で一番不幸だと感じていたのですが、彼は決して離れることなく、リハビリや日常の介助をしてくれました。引きこもりがちな私を外に連れ出し、新たな空気を吸わせてくれました。

ある日、私たちは食事に出かけました。偶然彼の友人たちと会い、彼らの誘いで相席することになりました。彼らは笑いながら話し掛けてきました。「まだ付き合ってたんだね」「面倒くさくない?」「新しい彼女を作った方が…」「セッ○スもできないんじゃない?」などと言われました。彼は一瞬、「うん、そうだな」と答えました。その瞬間、私の心は沈み、涙がこぼれました。

しかし、彼は続けて、「迷惑だとか、新しい彼女が欲しいとか、一度も思ったことがないんだ。お前らの基準がセッ○スかどうかなら、寂しいよ。足が不自由だろうが、彼女は彼女だ。俺はこれからもずっと一緒にいる」と言いました。そして、食事代を払い、「行こう」と私を連れ立って店を出ました。

外に出た彼は、優しく笑いかけながら、「もう泣くなよ」と言いました。その時、私はこの人に出会えてよかったと心から感謝しました。私は本当に幸せだと感じました。

彼の言葉は、強い優しさとは何かを教えてくれました。弱い優しさではなく、大切な人を守るためには強さが必要だと。もし大切な人が傷つけられたなら、躊躇せず全力で守ってほしいと願います。


note 開設のお知らせ

いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

泣ける話・感動の実話まとめ - ラクリマ | note

最新情報は ラクリマ公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

夕焼け(フリー素材)

大きな下り坂

夏休みに自転車でどこまで行けるかと小旅行。計画も、地図も、お金も、何も持たずに。 国道をただひたすら進んでいた。途中に大きな下り坂があって、自転車はひとりでに進む。 ペダル…

母猫(フリー写真)

母猫の選択

Rの実家は猫好きな一家で、野良猫に餌をあげているうちに、家中猫だらけになってしまったそうだ。 住み着いた猫が仔を作り、その仔もまた仔を作る。 一時は家庭崩壊しかけたほど猫が…

カルテを持つ医師(フリー写真)

医者になれ

高校一年生の夏休みに、両親から 「大事な話がある」 と居間に呼び出された。 親父が癌で、もう手術では治り切らない状態であると。 暑さとショックで頭がボーっとして…

ビル

予期せぬ守り神

内定式で初めて彼女と出会った。彼女は私たちの同期だった。 彼女は聡明の代名詞のような人だった。学生時代の論文で賞を受けるほどの才女で、周囲からは期待の新星と見なされていた。 …

親子

「おかえり」と言ってくれる人

私は、父が大好きだ。 いつも優しくて、笑顔を絶やさない人。 私がいじめられていたときも、誰よりも真剣に話を聞いてくれて、守ってくれた。 ※ 父の職場は遠くて、…

バイオリン(フリー写真)

世界一の良い娘

昨夜、嫁とケンカした。 切っ掛けは些細なことで、小学2年生の娘がバイオリンを習いたいと言い出したことだ。 嫁「本人がやりたいなんて言い出すのは珍しいから、習わせてあげたい」…

親子(フリー写真)

お袋からの手紙

俺の母親は俺が12歳の時に死んだ。 ただの風邪で入院してから一週間後に、死んだ。 親父は俺の20歳の誕生日の一ヶ月後に死んだ。 俺の20歳の誕生日に、入院中の親父から…

花(フリー写真)

母が見せた涙

うちは親父が仕事の続かない人で、いつも貧乏だった。 母さんは俺と兄貴のために、いつも働いていた。ヤクルトの配達や、近所の工場とか…。 土日もゆっくり休んでいたという記憶は無…

猫

小さな隊長たち

子供が外に遊びに行こうと玄関を開けたとたん、突如、猫が外に飛び出して行ってしまった。 探してやっと見つけたとき、愛する猫はもうかわり果てた姿になっていた。 私はバスタオル…

廊下

涙の中の絆

僕は小さい頃、両親に捨てられ、孤独な日々を過ごしていた。 「施設の子」「いつも同じ服を着た乞食」という言葉が常に僕を追いかけた。 同級生と遊びたくても、その家の親に拒まれ…