ずっと笑顔で

公開日: ちょっと切ない話 | 兄弟姉妹

双子の姉妹(フリー写真)

私には双子の妹がいます。名前はあやか。

私たちはそっくりすぎるほどよく似ていて、両親もたまに間違えるほどです。

でも性格は全く違って、あやかは昔からとても活発で明るい性格でした。

いつも前向きで、運動をするのが大好きな子でした。

一方私は、ネガティブで体を動かすことがあまり好きな方ではありませんでした。

でもあやかと一緒ならどこへ行くのも何をするのもとても楽しかった。

あやかは中学、高校で柔道をしたり専門学校ではバスケットをしたり、社会人になってからはボクシングを始めていました。

いつも元気で明るいあやかの周りには、沢山の人が集まって来るような、まるで太陽のような子でした。

私はそんなあやかにいつも憧れていました。

そんな彼女をある病魔が襲いました。乳がんでした。発見された時には既に末期状態で、余命1ヶ月を宣告されました。

運動が大好きで、いつも元気に動き回っていたあやかが、何で。

その想いで一杯でした。辛くて悲しくて、毎日毎日涙が止まりませんでした。

でもあやかは、

「まだ1ヶ月あるやん。あと1ヶ月、何しようかな~。どっか旅行いかへん? くよくよしてる時間がもったいないわ!」

そう言って携帯を取り出して宿泊先や航空券を調べていました。

あまりの前向きさに驚きながらも、朝まで旅行の計画を立て始めました。

一番辛いはずのあやかがこんなに前向きに頑張っているのだから、最期まで楽しい思い出を一杯作ってあげよう!そう心に決めました。

余命の1ヶ月があっという間に過ぎて、私たちの目標は最期の思い出を作ることよりも、ガンを克服することに自然と向いていました。

北は北海道、南は沖縄まで、あやかの行きたい所に沢山行きました。

毎日あやかの笑顔を見ていると、本当にガンは消えてなくなるんじゃないかと思えてきました。

でも現実はそう甘くはありませんでした。

順調に快方に向かっていると思われていた矢先、急に状態が悪化しそのまま入院をすることになりました。

また私は毎日泣いていました。このままあやかがいなくなったらどうしよう。

そんなことばっかり考えていました。

するとあやかが、

「なあ、私らそっくりの双子やからわかんねん。お姉ちゃんが泣いてたら、私が泣いてるのと一緒。お姉ちゃんが笑えば、私が笑っているのと一緒やで。

やからな、約束してや。最期までずっと笑顔でおろ。みんなにあやかとお姉ちゃんの笑顔見せたろ」

その日から私は涙を封印しました。あやかのために、あやかを支えてくれている人のために常に笑顔でいると二人で約束しました。

それが二人でした最後の約束でした。

あやかは29歳という若さでこの世を去りました。常に笑顔でいると約束したはずなのに、あやかを想うと涙が止まりません。

ふと空を見上げると、

「お姉ちゃん!笑顔やで!」

そうやって怒ってくるあやかの声が今でも聞こえてきそうです。

二人で行った沢山の旅行の写真を見ながら、あやかの笑顔を常に思い出します。

最期まで、そしてこれからも笑顔で。

関連記事

キャンドル

灯り続ける希望の光

24歳の時、僕は会社を退職し、独立を決意しました。上司の姿から自分の未来を映し出し、恐れを感じたからです。しかし現実は甘くなく、厳しい毎日が始まりました。25歳で月収7万円、食事は白…

夕焼け(フリー素材)

大きな下り坂

夏休みに自転車でどこまで行けるかと小旅行。計画も、地図も、お金も、何も持たずに。 国道をただひたすら進んでいた。途中に大きな下り坂があって、自転車はひとりでに進む。 ペダル…

父と子のシルエット(フリー写真)

親父からのタスキ

小さい頃、よく親父に連れられて街中を走ったものだった。 生まれた町は田舎だったので交通量が少なく、そして自然が多く、晴れた日にはとても気持ちの良い空気が漂っていた。 ※ 親父…

ワイン(フリー写真)

ワイン好きの父

いまいち仲が良くなかった父が、入院する前夜にワインを取り出し、 「まあいつまで入院するか分からないけど、一応、別れの杯だ」 なんて冗談めかして言ったんだ。 こんなのは…

父の背中(フリー写真)

本当のお金の価値

私が中学校1年生の時の話である。 私は思春期や反抗期の真っ只中ということもあり、少しばかりやんちゃをしていた。 不法侵入をしたり、深夜まで遊んでいたこともあり、警察にはし…

鉛筆と参考書(フリー写真)

厳しい母

私の母はとても厳しい。 身の回りの事は全て自分でやらされていた。 勉強も部活も一番じゃないと気が済まない。 定期テストで二番を取ると、 「二番は敗者の一番だ」…

夏の部屋(フリー写真)

残された兄妹

3年前、金融屋をやっていたんだけど、その年の夏の話。 いつものように追い込みを掛けに行ったら、親はとっくに消えていたんだけど、子供が二人置いて行かれていた。 5歳と3歳。上…

女子高生(フリー写真)

一緒に生きる覚悟

妻が亡くなる前、闘病の際に「私が死んでも泣かないで」と娘二人は言われていました。 それから数日後、妻は息を引き取りました。 通夜の晩は私が会場で妻に付き添うこととし、当時…

結婚指輪(フリー写真)

ずっと笑っていてね

去年の夏、彼女が逝きました。 ある日、体調が優れないので病院へ。 検査の結果、癌。 余命半年と診断されました。 最期まで「もっと生きたい」「死にたくない」とは言…

お手玉(フリー写真)

私のこと忘れないでね

遠い昔、私が小学4年生の頃の話です。 当時の僕は人見知りで臆病で、積極的に話しかけたりするのが出来ない性格でした。 休み時間、みんなは外に出て遊んでいても、僕は教室の椅子…