人のために出来ること
ある家庭に、脳に障害のある男の子が生まれた。
そして数年後、次男が誕生した。
小さい頃、弟は喧嘩の度に
「兄ちゃんなんて、バカじゃないか」
と言った。それを聞いて母親は悲しんだ。
だが母は何も言わず、じっと待つことにした。
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兄が小学1年生になった時、兄の同級生を招いて兄の誕生日の祝いをしたのだが、兄は悲しいかな、急に招待した同級生を殴り始めた。
その時、弟が飛び出して来て、
「お兄ちゃん、殴るんだったら僕を殴って。ぼくなら痛くないから!」
それを聞いた母は心の中で『坊やありがとう』と言った。
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その弟が小学一年生に入学した時、隣の席は手に障害のある子だった。
体育の授業のある日は体操服に着替えなければならないので、当然その隣の子は着替えに手間取って遅れて来た。
しかし二回目からは時間通りに来たので先生は不思議に思い、体育の授業のある日、そっと教室を覗いてみた。
すると、あの弟が一生懸命になって着替えを手伝っていたのだ。
先生はこのことをみんなに話そうかとも思ったが、せっかく弟が自主的にやっていることなので黙っていた。
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さて、七夕の前日は授業参観日だった。
先生が児童の書いた短冊の願い事を読んでいた。
子供らしいおもちゃが欲しいなどの願いの中に、
『神様、どうか隣の子の腕を早く治してください』
と書いてあるのを見つけた。
そう、あの弟の書いたものだ。
先生は堪らなくなって、みんなの前でこの間の着替えのことを話し始めた。
自分の子が手に障害があるのでみんなに迷惑を掛けているのではないかと、廊下の隅で小さくなって授業を見守っていた母親が教室に飛び込んで来て、弟の足元で号泣した。
「坊やありがとう。ありがとう。ありがとう。ありがとう…」