大切なペンダント

公開日: ちょっと切ない話 | 恋愛

恋人同士(フリー写真)

中学2年生の時、幼馴染のKという女子に恋心を抱いていた。

しかし、Kは俺よりも数倍かっこいい男子と付き合っていた。

俺がかなう相手でもなく、彼女自身がそれを伝えてきたので、複雑な気持ちになった。

しかも、恋愛経験のない俺にいろいろ悩みを相談してきた。

ある日、人気のない公園でKの相談に乗っていた時、Kが彼氏と関係がちょっと危ういと言いだした。

話が一段落したところで、Kが俺のペンダントを取って、

「仲直りってことで、これ彼氏にあげてくるね♪」と言った。

他人のお古を彼氏に渡すなんて、どういうことだ?

その2ヶ月後、Kは車にひかれて死んでしまった。

かなり急なことだったので、その事を聞いた時は、全く動けなかった。

葬式の時も、まだ素直に現実を受け止められなかった。

家に帰った後、どうしても抑えきれず、Kのお母さんにKの部屋を見せてほしいと頼んだ。

Kの部屋に入ってみたら、どこか懐かしい香りがした。

部屋を見ていると、タンスの上に箱があった。

恐らく小さい頃からずっと使っていたんだろう。

そっと開けてみると、中にはちっちゃな消しゴムや鉛筆、友達とピースしている写真などが、沢山入っていた。

そして、俺のあの時のペンダントがあった。

よく見てみると、消しゴムの一部や鉛筆の端っこには、俺の名前がうっすらと残されていた。

思わずドキッとした。

もしかして……と思った瞬間、急に涙が溢れてきた。

止められやしなかった。

関連記事

民家

最後まで泣けなくて

僕は先月7月22日に父方の祖母を亡くしました。72歳。あと1週間生きていれば73歳でした。 普段から僕は祖母を「ばあば」と呼んでいました。高校生にもなってこんな呼び方恥ずかしい…

机

文化祭の日には

ある日、教室へ行くと座席表が更新されていました。私の席は廊下側の前から二番目、彼は窓側の一番後ろの席。離れてしまいましたが、同じクラスになれて本当に良かったと思いました。 クラ…

赤い糸(フリー写真)

同級生との再会

私はその日、両親、妹と住宅展示場に来ていました。 家を新築する予定となり、両親はここのところ住宅展示場巡りをしていました。 私はなかなか予定が合わず、住宅展示場に来るのはこ…

新婦(フリー写真)

父が隠していた物

友人(新郎)の結婚披露宴での出来事。 タイムスケジュールも最後の方、新婦の父親のスピーチ。 ※ 「明子。明子が生まれてすぐ、お前のお母さんは病気で亡くなりました。 お前…

カップル

変わらずそばに

事故に遭い、足が不自由になってしまいました。車椅子がなければ外に出ることも、トイレに行くこともままなりません。多くの友人が去っていきましたが、彼だけは事故前から変わらずにそばにいてく…

コザクラインコ(フリー写真)

ぴーちゃんとの思い出

10年前に飼い始めた、コザクラインコのぴーちゃん。 ぴーちゃんという名前は、子供の頃からぴーぴー鳴いていたから。 ぴーちゃんは、飛行機に乗って遠く九州から東京にやって来ま…

廊下

涙の中の絆

僕は小さい頃、両親に捨てられ、孤独な日々を過ごしていた。 「施設の子」「いつも同じ服を着た乞食」という言葉が常に僕を追いかけた。 同級生と遊びたくても、その家の親に拒まれ…

夕日(フリー写真)

生きることの大切さ

ガンダム芸人の若井おさむさん。 彼は幼い頃から日常的に、兄と母親から相当な虐待を受けていました。 それは彼が20代前半の頃までずっと続きました。 それに耐えかねた若…

空(フリー写真)

神様がくれたミッション

私は都内でナースをしています。 これは二年程前の話です。 ある病院で一人の患者さんを受け持つことになりました。 22歳の女性の患者さんです。 彼女は手遅れの状態…

ピンクのチューリップ(フリー写真)

親指姫

6年程前の今頃は花屋に勤めていて、毎日エプロンを着け店先に立っていた。 ある日、小学校1年生ぐらいの女の子が、一人で花を買いに来た。 淡いベージュのセーターに、ピンクのチェ…