船頭がくれた欠けた飯茶碗
十七の冬、厳しい父と衝突し家を捨てた俺は、雪の北の港町で行き場を失った。飯にありつけず座り込む俺に声をかけたのは、腰に藍色の手ぬぐいをさげた老いた船頭だった。名…
十七の冬、厳しい父と衝突し家を捨てた俺は、雪の北の港町で行き場を失った。飯にありつけず座り込む俺に声をかけたのは、腰に藍色の手ぬぐいをさげた老いた船頭だった。名…
港町の惣菜屋で働く母の割烹着が恥ずかしかった。東京で花屋を開いた息子が十年ぶりに帰郷して見つけたのは、母が裏庭でひっそり育てていた息子と同じ花だった——心が震え…
十七年間言えなかった「ありがとう」。不器用な写真家が港町で偶然見つけた恩師の個展。対になった青磁の湯呑みが二人の時間をつなぐ感動の物語。…
写真家の俺は九年ぶりに港町へ戻り、雑貨屋の窓で別れた君と再会した。棚の奥から出てきた小さな鍵には、亡き父の字で「取りに来る」とだけ記した紙が結ばれていた。来たけ…
港町の祖母の家には、三時十分を指したまま動かない止まった柱時計があった。二万八千円の修理を断った祖母が代わりに買ったのは、千円の真鍮の音叉が一本だけ。調律師にな…
調律師の私が父の遺品から見つけた古いレコーダー。そこに録られていたのは、幼い日の私のピアノと、父が一度も言葉にできなかった想いだった。…
祖父にもらった青い硝子のかけらを、幼なじみの千夏は「彼にあげてくる」と言って持っていきました。春の前に千夏を見送ったあと、私は菓子の缶の底で、あの雪の朝になくし…
泣ける話。瀬戸内の港町の古い文化住宅で出会った、隣の部屋の小さな女の子。お腹を空かせた私に握ってくれた、塩気のないおにぎりの本当の意味を、私はずっとあとになって…
三重・尾鷲の港町にある椅子六脚の定食屋つばめ食堂。七十八歳のおかみさんは、だし巻きを焼くとき一巻き目だけ菜箸を右から左へ持ち替えます。半世紀のあいだ誰にも教えな…