引き出しの奥の布張りのノート
雨の日曜、整理だんすのいちばん下から出てきた布張りのノート。そこには妻の昼ごはんが毎日、納豆ごはんかお茶づけだと書かれていました。小さくなった茶わん、棚の上の菓…
雨の日曜、整理だんすのいちばん下から出てきた布張りのノート。そこには妻の昼ごはんが毎日、納豆ごはんかお茶づけだと書かれていました。小さくなった茶わん、棚の上の菓…
夫は、息子の産声を聞けないまま、静かに逝きました。一歳の誕生日に郵便受けへ届いた、二通の手紙。雪深い和紙の里で紙を漉く妻のもとへ、亡き夫が遺した不器用な言葉が、…
雪の降る港町で、人生のどん底のまま海へ向かった洋裁職人の私を救ってくれたのは、道に迷った夜のパン屋・湊さんでした。焼きたてのパンから始まった出会いと、十年の静か…
病を抱えた妻は、娘の未来の誕生日に宛てて、一通ずつ手紙を書き残しました。雨のバス停で傘を差し出して出会い、最後まで寄り添った夫婦の歳月を、静かに綴る泣ける話です…
活版の工房で十年、私は鉛の文字ばかり拾ってきました。父親を見送った妻が声を失った一年、私が夜ごと組んだ言葉を、妻は空き缶の活字としてひとつずつ集めていました。蓋…
静岡・浜松でピアノの響板を作る工場で出会った妻は、生まれたときから音を知らないろう者でした。西日の部屋で背後からそっと告げた、聞こえるはずのない言葉。それでも妻…