虐めの現実

公開日: 悲しい話

教室(フリー写真)

俺は高校生の時、授業以外の時間はいつも小説を読んで過ごしていた。

まあ、それくらいしかやる事がなかっただけだけどね。

ある日、体育の授業が終わり教室に帰って来て、いつものように自分の机に座った。

みんなこっちを見ている。

女子達も戸惑った顔でこっちを見ている。

何故かと言うと、机の上に無惨に切り裂かれた小説が置いてあったから。

それを見た瞬間、気付くと切れ端を黙って涙流しながら掃除していた。

俺には友達がいない。

お母さんもそれに気付いているのか分からないけど、俺が小説好きだからと、月に一冊は買ってプレゼントしてくれるんだ。

いつも読み終わった後、感想とか聞いてくれるんだよね。

俺の好きそうな小説を探すためなのは言うまでもなく解る。

俺はお母さんが探して来てくれた小説が大好きだった。

切り裂かれた小説を掃除しながら、涙が止まらなかった。

ごめんね、お母さん。

俺が嫌われているから、折角買って来てくれた小説がだめになっちゃった。

お母さん、ごめん。

関連記事

ポメラニアン(フリー写真)

天国のチロル

家で飼っていた犬の話。 私が中学生の頃、保健所に入れられそうになっていた4歳の雌のポメラニアンを引き取った。 名前は、前の飼い主が付けたらしい『チロル』。 チロルは本…

家族(フリー写真)

娘への遺言

レミオロメンの「3月9日」という曲が流れる度に、私は泣きそうになります。 両親は、私が10歳の時に事故死しました。 あの日は家族旅行に行っていました。 帰り道、高速…

ラムネ

愛する人への別れ

彼女は完璧な存在だった。その可愛らしさ、スタイル、そして性格。俺は彼女に一目惚れした。 彼女も同じように感じてくれた。彼女からの告白で付き合うことになり、俺は幸せだった。 …

南国の夕日(フリー写真)

特攻隊員の方の遺書

戦いは日一日と激しさを加えて参りました。 父母上様、長い間お世話になりました。 私も未だ十九才の若輩で、この大空の決戦に参加できることを、深く喜んでおります。 私は…

父(フリー写真)

父と私と、ときどきおじさん

私が幼稚園、年少から年長頃の話である。 私には母と父が居り、3人暮らしであった。 今でも記憶にある、3人でのお風呂が幸せな家族の思い出であった。 父との思い出に、近…

花(フリー写真)

綺麗なお弁当

遠足の日、お昼ご飯の時間になり、担任の先生が子供たちの様子を見回って歩いていた時のことです。 向こうの方でとても鮮やかなものが目に入って来ました。 何だろうと思い近寄って見…

タクシーの車内(フリー写真)

覚えていてくれたんですね

仕事帰りに乗ったタクシーの運転手さんから聞いた話です。 ※ ある夜、駅のロータリーでいつものように客待ちをしていると、血相を変えたサラリーマン風の男性が 「○○病院…

手をつなぐカップル(フリー写真)

未来への遺言

私の初恋の人、かつての彼氏がこの世を去りました。 若さゆえに我儘を尽くし、悔いが残る行為ばかりでした。 ある日、突如として「別れて欲しい」と告げられ、私は意地を張って「い…

北部ソロモン諸島(ブーゲンビル島)の戦い

貴様飲め!

俺のおじいちゃんは戦争末期、南方に居た。 国名は忘れたけど、とにかくジャングルのような所で衛生状態が最悪だったらしい。 当然、マラリアだのコレラだのが蔓延する。 おじ…

コスモス

未来への手紙

家内を亡くしました。 お腹に第二子を宿した彼女が乗ったタクシーは、病院へ向かう途中、居眠り運転のトラックと激突し、彼女は即死でした。 警察からの連絡を聞いた時、酷い冗談だ…