余命半年の彼女

公開日: 恋愛 | 悲しい話

コスモスの花(フリー写真)

今日、彼女と別れた。

原因は彼女の病気、癌だった。

最初に聞いた時、冗談だと思った。

つい昨日まで普通に遊んで、喋って、ご飯を食べて、笑っていたのに。

俺は、

「すぐ治るんだろ?」

と聞いた。そしたら彼女が黙って首を振った。

「あと半年だって」

そして俺の前で初めて泣いた。

付き合って2年、俺より4つ年上の彼女は、俺には決して涙を見せなかった。

俺は甘えるだけだった。

もっと甘えて欲しかった。

もっと悩みを聞かせて欲しかった…。

「それなら半年間、思い出を沢山作ろう」

そう言った俺に、

「ううん、たっくんと過ごした2年間は夢のようだった。凄く楽しい毎日だった。

でもやっと諦めがついた。もうどんなに頑張っても半年の命なんだって。今まで十分幸せだったって…。

これ以上、一緒に居たらもっと一緒に居たいと思うようになる。

そのまま死んだら悲し過ぎるから、たっくんの事は良い思い出として取っておきたい。

だからもう会うのはこれっきりにしよう」

結局、彼女は最後まで俺に甘えてくれなかった。

俺は彼女の事を、一生忘れない。

関連記事

廃墟

神戸からの少女

2年前、旅行先の駐屯地祭での出来事です。 例によって、特定の市民団体が来場し、場の雰囲気が少し重たくなっていました。そのとき、女子高生と思しき一人の少女がその団体に向かって歩い…

駅

再生の贈り物

私には本当の親がいない。物心ついたときにはすでに施設で育てられていました。親が生きているのか、死んでいるのかもわからないまま、私はただ普通に生きてきました。 施設での唯一の家族…

カップルの後ろ姿

彼がくれた最期の「ありがとう」

あれは、今から一年半前。大学3年になったばかりの春のことでした。 授業が終わり、帰り支度をしていると、携帯が鳴りました。 画面に表示されたのは、彼の親友からの着信。「珍し…

ポメラニアン(フリー写真)

愛の形

私はあるペットクリニックに勤めています。 そこで起こった悲しい出来事をお話します。 ※ 40代くらいの男性がポメラニアンを連れてよく来ていました。 その人が購…

日記帳

赦しと再生の旋律

小学校の頃、私は虐められたことがある。 ふとしたことから、クラスのボス格女子とトラブルになった私。 その日以来、無視され続け、孤立した日々を送ることになった。 中学…

夕日(フリー写真)

自衛隊の方への感謝

被災した時、俺はまだ中学生でした。 家は全壊しましたが、たまたま通りに近い部屋で寝ていたので腕の骨折だけで済み、自力で脱出することが出来ました。 奥の部屋で寝ていたオカンと…

チワワ

脳梗塞で亡くなったチワワ

今から3年程前の事です。 飼っていたチワワ(以下、まーちゃん)が脳梗塞で亡くなりました。 14歳でした。 まーちゃんは亡くなる前日まで元気で、死因が脳梗塞と聞いた時…

カップル(フリー写真)

気付かないふり

一昨年の今日、告白しました。生まれて初めての告白でした。 彼女は全盲でした。 それを知ったのは、彼女が弾くピアノに感動した後の事でした。 俺は凄くびっくりしました。そ…

カップル

傷跡を越えて

私は生まれながらに足に大きな痣があり、それが自分自身でもとても嫌いでした。その上、小学生の時に不注意で熱湯をひっくり返し、両足に深刻な火傷を負いました。痕は治療を重ねましたが、完全に…

教室

見落とされた優しさ

私は昔から何事にも無関心で無愛想でした。友達は少なく、恋愛経験もほとんどありませんでした。偽りの笑顔やうそをついて生きる日々は、いじめの対象になることもありました。 中学1年の…