余命半年の彼女
今日、彼女と別れた。
原因は彼女の病気、癌だった。
最初に聞いた時、冗談だと思った。
つい昨日まで普通に遊んで、喋って、ご飯を食べて、笑っていたのに。
俺は、
「すぐ治るんだろ?」
と聞いた。そしたら彼女が黙って首を振った。
「あと半年だって」
そして俺の前で初めて泣いた。
付き合って2年、俺より4つ年上の彼女は、俺には決して涙を見せなかった。
俺は甘えるだけだった。
もっと甘えて欲しかった。
もっと悩みを聞かせて欲しかった…。
「それなら半年間、思い出を沢山作ろう」
そう言った俺に、
「ううん、たっくんと過ごした2年間は夢のようだった。凄く楽しい毎日だった。
でもやっと諦めがついた。もうどんなに頑張っても半年の命なんだって。今まで十分幸せだったって…。
これ以上、一緒に居たらもっと一緒に居たいと思うようになる。
そのまま死んだら悲し過ぎるから、たっくんの事は良い思い出として取っておきたい。
だからもう会うのはこれっきりにしよう」
結局、彼女は最後まで俺に甘えてくれなかった。
俺は彼女の事を、一生忘れない。