
昨日、恋人が死んだ。
長い闘病の末、静かに息を引き取った。
通夜が終わり、病院に残っていた荷物を取りに行った時、
その中に、俺宛ての手紙が入っていた。
白い封筒。
見慣れた字。
弱々しい筆跡。
震える手で開けると、そこにはこう書かれていた。
『わたしの人生は、普通の人より短かった。
でも、○○君と一緒に過ごせたことで、
普通の人よりもずっと幸せな日々を送れました』
……お前、そんなこと、今さら言うなよ。
もう死んでるんだぞ。
もう、言葉を返せないんだぞ。
※
最後の方は、ろくに起き上がることも出来なかったくせに、
必死で震える手で書いたんだろう。
『よし、○○君のこと、ずっと見守ってる』
そんな言葉まで、残して。
お前な……俺だって言いたいことが山ほどあったんだよ。
生きているうちに、伝えたかったことがいっぱいあったんだよ。
愛してるとか、ありがとうとか、もう一度言いたかった。
だから、お願いだ。
もう一度だけ、生き返ってくれよ。
もう一度だけ、あの声で笑ってくれよ。
今さらこんな手紙を読まされたら、泣くしかねぇだろ。
※
そして、最後にこう書いてあった。
『わたしのことは忘れて、他の人と幸せになってほしい』
――ふざけんなよ。
そんなこと言われて、忘れられるわけねぇだろ。
お前は本当に、もうこの世にいないのか?
俺の知らない場所で、まだ笑ってるんじゃないのか?
これは全部、悪い夢なんじゃないのか?
何度そう思っても、
冷たい現実が、じわじわと心に沈んでいく。
※
独り残された俺にできることなんて、
お前を忘れずに生きることくらいしかない。
供養ってやつは、そういうことだろう。
たとえ俺が年を取って、
記憶が曖昧になっても、
お前の笑顔だけは絶対に消えない。
「もう次の恋を探せ」って?
馬鹿言うなよ。
お前以上に好きになれる人なんて、いるわけないだろ。
お前がいない世界で、
同じような恋ができるわけがないんだよ。
※
だからさ――
俺がそっちへ行くまで、
長い首をして待ってろよ。
お前はそっちで笑っていろ。
そこはもう、苦しまなくていい場所なんだろ?
なあ、そうなんだろ?
……なあ、答えてくれよ。
ふざけんなよ。
お前、ほんとにずるいよ。