愛する人を失っても

手紙

昨日、恋人が死んだ。

長い闘病の末、静かに息を引き取った。

通夜が終わり、病院に残っていた荷物を取りに行った時、
その中に、俺宛ての手紙が入っていた。

白い封筒。
見慣れた字。
弱々しい筆跡。

震える手で開けると、そこにはこう書かれていた。

『わたしの人生は、普通の人より短かった。
でも、○○君と一緒に過ごせたことで、
普通の人よりもずっと幸せな日々を送れました』

……お前、そんなこと、今さら言うなよ。

もう死んでるんだぞ。
もう、言葉を返せないんだぞ。

最後の方は、ろくに起き上がることも出来なかったくせに、
必死で震える手で書いたんだろう。

『よし、○○君のこと、ずっと見守ってる』

そんな言葉まで、残して。

お前な……俺だって言いたいことが山ほどあったんだよ。

生きているうちに、伝えたかったことがいっぱいあったんだよ。

愛してるとか、ありがとうとか、もう一度言いたかった。

だから、お願いだ。
もう一度だけ、生き返ってくれよ。
もう一度だけ、あの声で笑ってくれよ。

今さらこんな手紙を読まされたら、泣くしかねぇだろ。

そして、最後にこう書いてあった。

『わたしのことは忘れて、他の人と幸せになってほしい』

――ふざけんなよ。

そんなこと言われて、忘れられるわけねぇだろ。

お前は本当に、もうこの世にいないのか?

俺の知らない場所で、まだ笑ってるんじゃないのか?

これは全部、悪い夢なんじゃないのか?

何度そう思っても、
冷たい現実が、じわじわと心に沈んでいく。

独り残された俺にできることなんて、
お前を忘れずに生きることくらいしかない。

供養ってやつは、そういうことだろう。

たとえ俺が年を取って、
記憶が曖昧になっても、
お前の笑顔だけは絶対に消えない。

「もう次の恋を探せ」って?
馬鹿言うなよ。

お前以上に好きになれる人なんて、いるわけないだろ。

お前がいない世界で、
同じような恋ができるわけがないんだよ。

だからさ――

俺がそっちへ行くまで、
長い首をして待ってろよ。

お前はそっちで笑っていろ。
そこはもう、苦しまなくていい場所なんだろ?

なあ、そうなんだろ?

……なあ、答えてくれよ。

ふざけんなよ。
お前、ほんとにずるいよ。

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