遠くて近い二人

公開日: ちょっと切ない話 | 家族 | 心温まる話 |

カフェ

私はファミリーレストランでのひとときを静かに過ごしていました。

目の前のテーブルには、スーツ姿の中年の男性と、鮮やかな制服の女子高生が座っていました。

男性は痩せており、どこか東幹久さんに似た優しい雰囲気を持っていました。

対照的に、女子高生は目がぱっちりとしており、無邪気な笑顔をたびたび見せていました。

父「お気に入りのものを注文していいよ。あれは、君が小さい頃から好きだったよね。」

娘「うん、そうだね。」

父「お母さん、元気にしてる?」

娘「うん、大丈夫だよ。」

父「ちゃんとご飯、食べてるかな?」

娘「毎日、ちゃんと食べてるよ。」

父の言葉は時折、強調された陽気さを伴っていました。

しかし、その笑顔の裏に隠れた痛みを、次の言葉で私は感じ取りました。

父「新しいお父さん、優しい人か?」

娘「うん、とっても。でも、私が一番好きなのはお父さんだよ。」

父の目には驚きとともに涙が浮かんでいました。

彼の明るさは一瞬の間に霧消して、深い悲しみに包まれました。

その瞬間、周りの時間が止まったように感じられました。

店員さんが慎重にお手拭きを持ってきました。

そこには、絆を再確認する親子の姿がありました。

時が流れ、環境が変わっても、親子の絆は永遠であることを、私は強く感じました。


note 開設のお知らせ

いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

泣ける話・感動の実話まとめ - ラクリマ | note

最新情報は ラクリマ公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

ビーフシチュー

仲直りのビーフシチュー

昨日の朝、私は妻と言い争いをしてしまった。原因は、夜更かしによる私の寝不足で、朝の機嫌が非常に悪かったことだ。 「また仕事か」とぼやきながら起きる私。妻は私の気難しさを知ってい…

雲海(フリー写真)

命綱を譲った男性

1982年1月13日16時1分頃、ワシントン国際空港を激しい吹雪のなか離陸したエア・フロリダ90便が、離陸直後に氷結したポトマック川に架かる橋梁に激突・墜落した。 水没を免れた…

妊婦さん(フリー写真)

普通の一家の物語

その昔、大学の同級生の女の子にがりがりに痩せた子が居た。 細身の娘が好みだったので声を掛け、程なく恋仲に。 ある日、 「心臓に大穴が空いていて、苦しい。 子供も…

ローカル電車(フリー写真)

特別な千円札

学生時代、貧乏旅行をした。 帰途、寝台列車の切符を買ったら残金が80円! もう丸一日、何も食べていない。 家に着くのは約36時間後…。 空腹をどうやり過ごすか考…

3508 かしま(出典: 海上自衛隊ギャラリー)

かしま艦長の見事な対応

2000年7月4日、20世紀最後のアメリカ独立記念日を祝う洋上式典に参加するため、世界各国の帆船170隻、海軍の艦艇70隻がニューヨーク港に集結した。 翌日の5日に英国の豪華客船…

コスモス

愛と犠牲

数年前、私が中学2年生のときに、私たち兄弟の両親は交通事故で亡くなりました。私たちは三兄弟で、私は真ん中の子、4歳上の兄と5歳下の妹がいます。 事故後、私は母方の親戚に、妹は父…

トイレ(フリー写真)

ドア裏の落書き

以前、大きな病院に通院していました。 ある日、男子トイレの洋式の方に入って座ると、ドア裏に小さな落書きがあったのです。 『入院して二ヶ月 治らない もうだめだ』 ※ そ…

犬(フリー写真)

コロの思い出

うちにはコロという名前の雑種の犬が居ました。 白色と茶色の長い毛がふわふわしている犬でした。 私が学生の頃は学校から帰って来る時間になると毎日、通学路が見える場所に座り、遠…

手を繋ぐカップル(フリー写真)

彼女に宛てた手紙

ゆいへ なあ、俺もうダメみてぇだ。 何でだ? お前に出会うまでは死にたいぐらい毎日が退屈だった。 でも今は俺すげえ生きたい。 何で病気に勝てねえんだろ? …

旧日本兵の方(フリー写真)

やっと戦争が終わった

祖父が満州に行っていたことは知っていたが、シベリア行きが確定してしまった時に、友人と逃亡したのは知らなかった。 何でも2、3日は友人たちと逃亡生活を過ごしていたが、人数が居ると目…