虐め

公開日: 友情 | 悲しい話

教室(フリー写真)

友達が自殺した。

理由はよくある『虐め』。

俺は気付いていた。

友達が虐められてたことには気付いていた。

でも自分までそうなるのが嫌だったから、最後は他人の振りまでした。

まさか自殺をするとは思っていなかった。

ショックだった。

でも俺だってあいつを虐めたようなものだから、何も言えなかった。

ただ、ずっと後悔するしかなかった。

そしたらある日、友達の母親に呼ばれた。

「貴方は息子が虐められたの知ってたの?」

そう聞かれて、ただ

「はい」

と答えた。

『怒られるかな』と思った。

でも何故か、友達の母親は何も言わずに手紙を差し出して来た。

あいつが俺宛に書いたものだった。

俺への恨みでも書いてあるのか、と思った。

○○へ

こんな形で別れてしまってごめん。

虐められていた間のことについては、かなり怒ってる。

でも、誰だってああしたくなるよな。

だから、後悔するなよ。

俺のことをお前が庇ったら、お前まで虐められるだろ?

だからこれで良かったんだ。

お前は俺みたいにはなるなよ。

俺はもう死ぬけど、お前には生きていて欲しい。

男同士で気持ち悪いかもしれねえけど、何だかんだで俺はお前のこと好きだったからさ。

あ、もちろん、友達としてだぞ?

まあ、とにかく、俺はお前のことは恨んでねえから。

じゃあな。

恐らく死ぬ前に書かれたであろう手紙は、所々濡れていて文字がぼやけていた。

あいつがどんな気持ちでこれを書いたのかは分からない。

でも『もう二度と会えないんだな』『笑ってくれないんだ』という思いが込み上げて来て。

思い切り泣いた。その場に崩れ落ちるような感じで。

そしたら、あいつの母親が

「私ね、あの子が虐められてること知らなかったのよ。

だって、あの子ったら、家でもあなたの話ばかりしてるのよ?

でも、それも嘘だったのね。

…でも、気付いてあげられなかった私も悪いから、私に貴方を叱る権利はない。

息子の友達になってくれてありがとう」

そう言って泣き出すんだよ。

あの時の気持ちは、今でも忘れられない。

『ごめんな、俺、助けてやれなかった。

だからこそ、これからはお前の分もしっかり生きるよ』

現在、俺はスクールカウンセラーとして働いています。

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