初めての親友

公開日: 友情 | 心温まる話

学校の教室(フリー写真)

中学3年生の夏。私に不登校でオタクな女の子の友達が出来た。

切っ掛けは些細なことだった。担任の先生が、

「運動会の練習をするから、△△ちゃんを呼びに行って!」

と、何故か私に頼んだのだ。

まともに話したこともないのに…と思ったが、文句を言わずにその子の家まで呼びに行った。

大袈裟かもしれないけど、本当にあれは運命だったのかもしれない。

その子はびっくりするほど元気良く、私に話し掛けて来た。

そして私がアニメ好きだと知るや、自分の趣味も話して来た。

私とその子は友達になった。

一週間後、先生が私とその子の席を前後ろ同士にした。

二週間後、その子が朝と帰りのHRに出るようになった。

三週間後、その子が授業にちらほら出るようになった。

そして四週間後、いきなりその子から電話が掛かって来た。

「あ~、○○ちゃん(私の名前)?」

「え…。そうだけど、どうかしたの?」

「あのさ~、さっきテレビで…」

それからその子と小一時間話をした。

家族のことだったり、アニメや漫画のことだったり…。

要するに、他愛もない話をした。

最後にその子はこんなことを言った。

「あ~、明日さ~、暇だったらカラオケ行かない?」

涙が出そうになるのを、私は必死で堪えました。

だって、一緒にカラオケに行く遊び友達なんて居なかったから。

そもそも、友達と他愛もない話で長電話をしたことだって初めてだったから。

私は昔から一人ぼっちでした。軽く話せる友達は居るものの、彼女たちと遊びに行くほど親しくはありませんでした。

中学3年生になってから、私はクラスの皆から少しずつ離れて行きました。

そんな私の様子を、先生は気が付いていたのかもしれません。

いつも教室の隅っこで一人本を読んでいる私のことを、心配してくれていたのかもしれません。

先生の真意は今となっては分かりませんが、先生のおかげで、私には初めて親友と呼べる存在が出来ました。

月曜日が待ち遠しく感じられるようになりました。

この場を借りて、お礼を言いたいと思います。

関連記事

カフェ

遠くて近い二人

私はファミリーレストランでのひとときを静かに過ごしていました。 目の前のテーブルには、スーツ姿の中年の男性と、鮮やかな制服の女子高生が座っていました。 男性は痩せており、…

スマートフォン

父の遺した言葉

私は今、高等学校3年生です。父がこの世を去ったのは10月26日のことでした。 父は、私が心から尊敬し、誇りに思える素晴らしい人でした。彼の死に際して、母と妹は慟哭しました。 …

教室(フリー写真)

先生がくれた宝物

私がその先生に出会ったのは中学一年生の夏でした。 先生は塾の英語の担当教師でした。 とても元気で、毎回楽しい授業をしてくれました。 そんな先生の事が私はとても大好き…

ローカル電車(フリー写真)

特別な千円札

学生時代、貧乏旅行をした。 帰途、寝台列車の切符を買ったら残金が80円! もう丸一日、何も食べていない。 家に着くのは約36時間後…。 空腹をどうやり過ごすか考…

桜(フリー写真)

天国のおじいちゃんより

中学卒業が間近に迫ったある日のことです。 今までお世話になった人に手紙を書きましょう、という授業がありました。 みんなは友人や部活の顧問宛に一生懸命、手紙を書いていました…

月(フリー写真)

月に願いを

俺は今までに三度神頼みをしたことがあった。 一度目は俺が七歳で両親が離婚し、父方の祖父母に預けられていた時。 祖父母はとても厳しく、おまけに 「お前なんて生まれて来な…

父と子(フリー写真)

父が遺したもの

三年前に親父が亡くなったんだけど、殆ど遺産を整理し終えた後に、親父が大事にしていた金庫が出てきたんだよ。 うちは三人兄弟なんだけど、お袋も亡くなっていて、誰もその金庫の中身を知ら…

野球ボール(フリー写真)

少年への優しい嘘

アメリカのとある地方に、野球観戦の大好きな、でも目の見えない少年が居ました。 少年は大リーグ屈指のスラッガーである選手に憧れています。 ※ 少年はその選手へファンレターを綴り…

手紙

母の願い

毎日の小さな痛みや苦しみがあっても、子供たちが元気でいることが、私にとっての最大の喜びです。子供たちの笑顔や元気な声を聞くと、心から幸せを感じます。子供たちがありがとうと言ってくれる…

学校(フリー写真)

学生時代の思い出

俺が中学生の時の話。 当時はとにかく運動部の奴がモテた。 中でも成績が優秀な奴が集まっていたのがバスケ部だった。 気が弱くて肥満体の俺は、クラス替え当日から、バスケ部…