手話で結ぶ絆

公開日: 夫婦 | 子供 | 家族 | 心温まる話

シロツメグサ

私たちの娘は3歳で、ほとんど聞こえません。

その現実を知った日、私と妻はただただ涙に暮れました。繰り返し泣きました。

難聴という言葉が娘を別の世界の生き物に見せてしまうほど、私たちの心には重くのしかかりました。

妻は自分を責め、私も自分を責め、周りの健康な子を育てている友人たちに嫉妬さえ感じました。

私たちはどん底にいました。

私の高かったプライドは、周りに娘の障害を知られることを恐れていました。

すべてが憎らしく感じていました。

妻と娘と、この世を去ることさえ毎晩のように考えていました。

しかし、ある晩、妻が私に向かって何か手の動きをしていました。

彼女が精神的におかしくなったのかと心配になりましたが、彼女は口を動かしながらゆっくりと手を動かし始めました。

「大好き、愛してる。だから一緒に頑張ろう」という手話でした。

その時の妻の手が、この世のものとは思えないほど美しく、私にはそれが目覚ましとなりました。

何日もちゃんと娘の顔を見ていなかったことに気づいたのです。

娘は眠っていましたが、私が声をかけると、娘はにっこりと微笑んでくれました。

それから三年が経ちました。

娘の小さな手は今、巧みに動き、まるで言葉を話しているかのようです。

関連記事

ダイビング(フリー写真)

海中の恋

一年前から行きたかったダイビング体験ツアーに行くことになった。 本当は彼女と行きたかったのだが、春が来る前に別れてしまった。 だから仕方なく、男三人で南国へ向かった。 ※…

カップル(フリー写真)

人の大切さ

私は生まれつき体が弱く、よく学校で倒れたりしていました。 おまけに骨も脆く、骨折6回、靭帯2回の、体に関して何も良いところがありません。 中学三年生の女子です。 重…

桜(フリー写真)

春一番と親切なカップル

春一番が吹き荒れた日。 本当に物凄い強風で、その日は朝から店の看板が倒れたりトラブル続きで、ずっと落ち着かず疲れ切っていた。 そんな時、若いカップルのレジをしていると、彼氏…

手を繋ぐ恋人同士(フリー写真)

遠く離れても、絆は永遠に

ある町に、幼馴染の男女が暮らしていた。 彼らは幼い頃からずっと一緒に過ごし、お互いのことを大切に思っていた。 しかしある日、男性が突然遠い町へ引っ越すことになった。 …

通帳(フリー写真)

ばあちゃんの封筒

糖尿病を患っていて、目が見えなかったばあちゃん。 一番家が近くて、よく遊びに来る私を随分可愛がってくれた。 思えば、小さい頃の記憶は、殆どばあちゃんと一緒に居た気がする(母…

靴を持つ夫婦(フリー写真)

二つの指輪

「もう死にたい…。もうやだよ…。つらいよ…」 妻は産婦人科の待合室で、人目もはばからず泣いていた。 前回の流産の時、私の妹が妻に言った言葉…。 「中絶経験があったりす…

卒業証書(フリー写真)

忘れられない生徒

高校教師です。 私が教えていた生徒に問題児の女の子が居ました。 彼女は成績も悪くなく、資格取得にも一生懸命なのですが、その原動力は強過ぎる学歴コンプレックスらしく精神も病ん…

クリスマスプレゼント(フリー写真)

サンタさんから頼まれた

※編注: このお話は、東日本大震災発生から5日後の3月16日に2ちゃんねるに書き込まれました。 ※ 当方、宮城県民。 朝からスーパーに並んでいたのだが、私の前に母親と泣きべそ…

ファミレス

兄妹の絆

ファミリーレストランでの仕事中、私の隣のテーブルに親子が座った。 お母さんは若作りした茶髪で、中学生くらいの息子と小学生の妹を連れていた。 初めはただの普通の家族だと思っ…

倉庫(フリー写真)

おじさんとの約束

数年前の話です。 僕が大学生の頃、日雇いのアルバイトをしていました。 事務所に電話で翌日のアルバイトの予約をして、現場に行って働いていました。 主にやっていた仕事は…