知ってるよ

公開日: 家族 | 心温まる話 |

親子(フリー写真)

「結婚したい子が出来た」

とオヤジに言ったら、数日後に

「大事な話がある」

と言われ、家族会議になった。

今までに無い、真剣な顔で…。

父「実は、俺と…俺と、お前は血の繋がりが無いんだ」

俺「…うん、知っ…」

父「でもな! でも! 父さんは、いつだってお前を本当の息子と思って来た!」

俺「いや、うん。だから、知っ…」

父「お前は、俺の息子だぁぁぁぁ!」

父、涙目。

母、号泣。

俺、呆然。

父「うん、解るよ。いきなりこんな事言われたら…混乱するよな…。黙ってて悪かった。うん。父さんが悪かっ…」

俺「知ってるよ」

父「うん、そうだよな………。あ?」

俺「いや、だから俺。それ知ってるよ」

父「え?」

俺「え?」

嘘みたいだけど、本当の会話。

リアルで「え?」を言い合うとは思ってもみなかった(笑)。

オヤジは母親と結婚する前、うちの隣に住んでいた。

3才くらいの時、母親に

「たーちゃん(オヤジ)がパパになったら、あっくん(俺)はどう?」

と聞かれたのを憶えている。

俺は確か、

「すごく嬉しい」

みたいな事を言ったはず。

その時の事を母親に言ったら、

「だって…あっくん小さかったし。絶対覚えてないと思って…」

と泣かれた。

オヤジは、

「そっか。知ってたか。

知ってて一緒に居てくれたのか」

と泣いた。

危うく俺も泣きそうになった(笑)。

関連記事

キャンドル(フリー写真)

キャンドルに懸けた想い

僕は24歳の時、当時勤めていた会社を退職して独立しました。 会社の駐車場で寝泊まりし、お子さんの寝顔以外は殆ど見ることが無いと言う上司の姿に、未来の自分の姿を重ねて怖くなったこと…

ラグビー場(フリー写真)

ラグビーと恩師

私は高校時代に万引きをして、人生観が変わりました。 中学から好きだった野球を続ける為に、有名な強豪校に希望して入りました。 しかしボールを触らせて貰えず、毎日ボール拾いばか…

手繋ぎ

重なる運命のメッセージ

彼と彼女は、いつものツタヤの駐車場で待ち合わせをしました。お互いに重要な話があり、緊張しながら集まった二人は、メールで心の内を伝え合うことにしました。 彼は重い告白をしました。…

ママと娘

パパに届けたくて

4歳になる娘が、「字を教えてほしい」と言ってきました。 正直、どうせすぐ飽きるだろうと思いながらも、毎晩少しずつ教えてあげるようになりました。 「あ」はこう書くんだよ。「…

カレーライス(フリー写真)

クロベーの笑顔

俺が小学生の頃の話。 同じクラスに黒田平一(仮名)、通称クロベーというやつが居たんだ。 クロベーの家は母子家庭で、母親とクロベーと弟の3人暮らしだった。 クロベーの一…

花嫁(フリー写真)

娘として育てた妹

先日、友人の娘の結婚式に出席した。 友人とは高校からの友達で、娘の事も知っている。 しかし、その子は実は友人が20歳の時に生まれた妹で、親の居ない家族として育てるよりも、…

北部ソロモン諸島(ブーゲンビル島)の戦い

貴様飲め!

俺のおじいちゃんは戦争末期、南方に居た。 国名は忘れたけど、とにかくジャングルのような所で衛生状態が最悪だったらしい。 当然、マラリアだのコレラだのが蔓延する。 おじ…

手(フリー写真)

無償の愛

おじいちゃんは老いから手足が不自由で、トイレも一人で行くのは厳しい。 だから、いつもはおばあちゃんが下の世話をしていた。 おばあちゃん以外が下の世話をするのを嫌がったからだ…

カップル

光の中での再会

一昨年の今日、僕は告白をしました。それは、生まれて初めての告白でした。 彼女は、全盲でした。 その事実を知ったのは、彼女がピアノを弾いているのを聴いて、深く感動した直後の…

手編みのマフラー(フリー写真)

オカンがしてくれたこと

俺の家は貧乏だった。 運動会の日も授業参観の日さえも、オカンは働きに行っていた。 そんな家だった。 ※ そんな俺の15歳の誕生日。 オカンが顔に微笑みを浮かべて、…