おばあちゃんの願い

公開日: 家族 | 心温まる話 | 祖父母

サイコロ

子どもの頃、家庭の事情でおばあちゃんの家に預けられた俺。見知らぬ土地に来て間もないこともあり、友達はおらず、孤独を感じていた。

その寂しさを紛らわせるため、ノートに自分で考えたスゴロクを書くのに夢中になった。

モンスターや罠を描き加えるたび、おばあちゃんに見せては「ここでモンスターが出るんだよ」と自慢した。

おばあちゃんはいつもニコニコしながら俺の話を聞いてくれ、それが俺にとってはとても嬉しかった。

時が経ち、俺にも友達ができ、家の事情も解決し、実家に戻ることになった。

おばあちゃんは別れの時も笑顔で、「おとうさん、おかあさんと一緒に暮らせるんだね」と言ってくれた。

先日、そのおばあちゃんが亡くなった。89歳での大往生だった。

母から遺品を整理していた時、「あなたへ」と渡されたノートを開いてみると、おばあちゃん自身が作ったスゴロクが描かれていた。

モンスターやぬらりひょんなどの妖怪が混じっていて、おばあちゃんのユーモアが感じられた。

最後のページには「あがり」と達筆な文字で書かれており、その下には「義弘くんに友達がいっぱいできますように」という願いが込められていた。

その言葉を見た瞬間、俺の目からは涙が止まらなかった。家族の前で号泣するのはこれが初めてだった。

おばあちゃん、死に目に会えなくて本当にごめん。おばあちゃんの願い通り、友達もできたよ。ありがとう。

関連記事

花嫁(フリー写真)

血の繋がらない娘

土曜日、一人娘の結婚式だったんさ。 出会った当時の俺は25歳、嫁は33歳、娘は13歳。 まあ、要するに嫁の連れ子だったんだけど。 娘も大きかったから、多少ギクシャクし…

手編みのマフラー(フリー写真)

オカンがしてくれたこと

俺の家は貧乏だった。 運動会の日も授業参観の日さえも、オカンは働きに行っていた。 そんな家だった。 ※ そんな俺の15歳の誕生日。 オカンが顔に微笑みを浮かべて、…

三度目の月

三度、月に祈った夜

俺は、これまでの人生で三度だけ、神様にすがったことがある。 ※ 最初は、七歳のとき。 両親が離婚し、俺は父方の祖父母に預けられた。 祖父母はとても厳しく、愛情…

夕方の教室(フリー背景素材)

校長先生の名授業

私が考える教育の究極の目的は『親に感謝、親を大切にする』です。 高校生の多くは、今まで自分一人の力で生きて来たように思っている。 親が苦労して育ててくれたことを知らないんで…

花のお弁当

母を想うお弁当 ― 花でいっぱいの遠足の日

遠足の日のことでした。 お昼ご飯の時間になり、担任の先生は子どもたちの様子を見ながら、芝生の上を歩いていました。 色とりどりのお弁当が並び、笑顔と笑い声があふれるなか、ふ…

母(フリー写真)

私を大学に通わせてくれた母へ

あなたは私を産むまでずっと父の暴力に苦しんでいましたね。 私が産まれた時、あなたは泣きながら喜んだそうですね。 私が一才の誕生日に、借金を抱えたまま父が自殺しましたね。 …

ブーケを持つ花嫁(フリー写真)

手渡しのブーケ

私はウエディングプランナーの仕事をしています。 これまで沢山の幸せのお手伝いをさせていただきましたが、忘れられない結婚式があります。 新婦は私より大分年下の十代で、可愛らし…

夫婦(フリー写真)

幸せなことは何度でもある

結婚5年目に、ようやく待ちに待った子供が産まれた。 2年経って子供に障害があることが判明し、何もかもが嫌になって子供と死のうと思った。 そしたら旦那がメールが届いた。 ※…

桜

お兄ちゃんの約束

私は小学1年生の息子と、幼稚園年中の息子を持つ二児の母です。下の息子には障害があり、来年の就学が大きな課題となっています。 今年に入って、上の息子がニコニコしながら言いました。…

天国(フリー素材)

天国のおかあちゃんへ

もう伝わらないのは解っているけど、生きている内に伝えられなかった事を今、伝えるね。 まずは長い闘病生活、お疲れ様。最後まで絶対に諦めなかったおかあちゃんの姿、格好良かったよ。 …