祖父母からのお小遣い

夕日(フリー写真)

自分には77歳のばあちゃんがいる。

数ヶ月前にじいちゃんが亡くなり、最近はあまり元気が無い。

ばあちゃんの家には車で20分程で行ける距離だから、父と定期的に行くようにしている。

お墓のこととか、これから決めることが沢山あるのだけど、そう言えば実感したことがある。

じいちゃんの体調が悪くなってからは、家に行く度にお小遣いを貰っていた。

1000円だったり、2000円だったり、じいちゃんの気分によりけり。

学生からしたら有り難過ぎるし、母も「いいのに…」と言っていた。

でも、じいちゃんもばあちゃんも、

「お金の使い道って年寄りになったらそんなにないから」

と言い、わざわざポチ袋に入れて、ばあちゃんの達筆な字でいつも

『○○様

これからも頑張ってください

祖父母』

と書かれていた。

言葉は変わることがあり、テスト後だったら

『成績、良かったそうですね。また、頑張ってね!』

とか、コンクール前だと

『良い結果であるように、じいちゃんとばあちゃんも応援しています』

と書いてあった。

でもじいちゃんが亡くなってからは、

「ばあちゃん寂しいけん、あんたが泊りに来るなら1000円やろうかね」

と言っていた。

「1泊で1000円あげるけん、2泊して行ったら2000円よ」

と笑っていたけど、やはり一人って相当きついんだろうな。

しかし、この間もお小遣いを貰った。

『季節の変わり目、風邪には気を付けて』

と、これまた達筆な字で書かれていた。

『いやいや、ばあちゃんの方が気を付けてよ…』

と突っ込んだが、その下に『祖母』としか書かれておらず、

『ああ、そっか』

と思った。

50年以上連れ添って来た人が急に居なくなるのは悲しいんだな、と感じた。

だから、時間を見つけてばあちゃんに会いに行こうと思う。

関連記事

東京ドーム(フリー写真)

野球、ごめんね

幼い頃に父が亡くなり、母は再婚もせずに俺を育ててくれた。 学も無く技術も無かった母は、個人商店の手伝いのような仕事で生計を立てていた。 それでも当時住んでいた土地にはまだ人…

牢屋

想像の中の少女と共に

大戦中、ドイツ軍の捕虜収容所に居たフランス兵たちのグループが、捕虜生活の苛立ちから来る仲間内の争いや悲嘆を紛らわすために、共同で「脳内共同ガールフレンド」を創り出した話。 彼ら…

家の居間(フリー写真)

妹を守る兄

兄が6歳、私が2歳の頃に両親が離婚した。 私にその当時の記憶は殆ど無く、お父さんが居ないことを気にした覚えもありませんでした。 小学生に上がる頃に母が再婚し、義理の父が本当…

男の子

父の小さな優しさ

子供の頃、母が入院していた時期があって、そのせいで遠足の準備がうまくできなかったんだ。一人じゃお菓子も買いに行けなくて、家にあった食べかけのお茶菓子をリュックに詰め込んだのを覚えてる…

タクシー(フリー写真)

台風の日

タクシーの中でお客さんとどんな話をするか、平均で10分前後の短い時間で完結する話題と言えばやはり天気の話になります。 今日の福岡は台風11号の余波で、朝から断続的に激しい雨が降っ…

手を繋ぐ友人同士(フリー写真)

メロンカップの盃

小学6年生の時の事。 親友と一緒に先生の資料整理の手伝いをしていた時、親友が 「あっ」 と小さく叫んだのでそちらを見たら、名簿の私の名前の後ろに『養女』と書いてあった…

柴犬(フリー写真)

犬のきなこ

10年以上前、友達が一匹の柴犬を飼い始めた。 体の色が似ているからと言って、その犬は『きなこ』という名前になった。 友達は夕方になるとよく『きなこ』を散歩させていた。 …

親子(フリー写真)

娘が好きだったハム太郎

娘が六歳で死んだ。 ある日突然、風呂に入れている最中に意識を失った。 直接の死因は心臓発作なのだが、持病の無い子だったので病院も不審に思ったらしく、俺は警察の事情聴取まで受…

家族の手(フリー写真)

幸せな家族

私は長女が3歳になった時に長男を出産した。 長男が生まれるまで、私と長女は殆どずっと一緒に居た。 夫が居ない平日の昼間は、二人だけの時間だった。 でも子供が二人になる…

レストラン(フリー写真)

父の気持ち

某信用金庫に勤める二十歳の女性が、初月給を親のために使って喜んでもらおうと、両親をレストランに招待しました。 お母さんは前日から美容院へセットに行ったりして大喜び。 ところ…