ラジオから伝わる愛

公開日: 夫婦 | 心温まる話

ラジオ

私が子供の頃から、近所に住むご夫婦に可愛がられて育ちました。その夫婦には子供がおらず、私は幼いころから特別な存在でした。

おじさんは土建屋の事務員で無口な人ですが、優しさに溢れていました。おばさんは家で雑貨や野菜などを扱うミニスーパーのような店を営んでおり、朝から晩まで働いていました。そのため、家庭生活は常に忙しく、洗濯や掃除、おじさんとの食事もままならない日々が続いていました。

おばさんは自分の忙しさがおじさんに迷惑をかけているとずっと心に重荷を感じていたそうです。

今年の秋、おばさんは疲れがたたり体調を崩してしまい、一週間の入院生活を余儀なくされました。おじさんはコンビニ食で何とかやっていけると言っていましたが、おばさんは自分の不在がおじさんにとってどれほど大変かと心を痛めていました。

入院して4日後、おじさんの職場にローカルラジオ番組の取材が訪れました。偶然にも、その日は『会社対抗クイズ』というコーナーがあり、おじさんの職場の同僚が出演することになりました。私はその放送を聴くために、ラジオを持ってお見舞いに行きました。

放送中、参加者たちは奥さんについて笑いを取るために得点をつけるセグメントがありました。ほとんどが低い点数で、その理由も冗談めいたものでした。おばさんと共に聴いていると、気まずい雰囲気になりました。

そして、ついにおじさんの名前が呼ばれ、アナウンサーが彼に奥さんについての点数を尋ねました。おばさんは自分で20点とつぶやきましたが、おじさんの返答は全く違いました。
「98点!…だな。あれでなきゃワシの嫁は無理だ」というおじさんの言葉が流れた瞬間、おばさんは涙を流していました。

私たちはその瞬間を共有し、その年で一番感動的な出来事として心に刻まれました。おじさんのその一言が、おばさんへの深い愛情と彼女への感謝を改めて確認する機会となりました。

関連記事

サイコロ

おばあちゃんの願い

子どもの頃、家庭の事情でおばあちゃんの家に預けられた俺。見知らぬ土地に来て間もないこともあり、友達はおらず、孤独を感じていた。 その寂しさを紛らわせるため、ノートに自分で考えた…

教室(フリー写真)

女の子を庇うため

中学一年の時のこと。 授業中に隣の席の女の子がおしっこを漏らしていました。 女の子の席は一番後ろの端だったので、他には誰も気が付いていない様子。 僕はおもむろに席を立…

カップル(フリー写真)

気付かないふり

一昨年の今日、告白しました。生まれて初めての告白でした。 彼女は全盲でした。 それを知ったのは、彼女が弾くピアノに感動した後の事でした。 俺は凄くびっくりしました。そ…

サーカス(フリー写真)

ほどこしと親切

私がまだ十代の頃の話です。 サーカスの入場券を買うために、父と私は長い列に並んで順番を待っていました。 私たちの前に居るのは、ようやくあと一家族だけとなりました。 私…

教室の風景(フリー写真)

変わらぬ優しい笑顔

酷い虐めだった。 胃潰瘍ができるほど、毎日毎日、恐怖が続いた。 今もそのトラウマが残っている。 僕がボクシングを始めた理由。それは、中学生の時の虐めだ。 相手…

黒猫(フリー写真)

ぬこさま

今年のGW明けの頃のこと。 前の日から上司の機嫌が悪く、八つ当たりばかりされていた。 その日も私の力ではどうしようもないことで怒られた挙句、酷い言葉を浴びせられたり身体的欠…

海を眺める男の子(フリー写真)

ぽっけ

「このぽっけ、すごいねんで!!(`・ω・´)三3ムフー!!」 そう言って幼稚園の制服のポケットをパンパン叩いていた友達Aの息子。 ポケットにはハンカチ、ティッシュ、お菓子、…

柴犬(フリー写真)

おばあちゃんと柴犬

昔の話だが、近所に旦那さんに先立たれ、独り暮らしをしているお婆ちゃんが居た。 お婆ちゃんは室内で柴犬を飼っていた。 嫁いだ娘さんや孫たちがしょっちゅう様子を見に来ていたから…

赤ちゃん(フリー写真)

望まれた存在

君がママのお腹にいるとわかったとき、ママの目は涙で溢れていた。 僕が妊娠の報せを聞いたとき、クールに「そうか」と言おうと思っていた。 しかし、その言葉が出る前に、僕の目か…

吹雪(フリー写真)

ばあちゃんの手紙

俺の母方のばあちゃんは、いつもニコニコしていて、かわいかった。 生んだ子供は四姉妹。 娘が全員嫁いだ後、長いことじいちゃんと二人暮らしだった。 そして、じいちゃんは2…