泣き虫さんへ ― 私がいなくなったあとも

恋人同士

私の命は、まもなく静かに尽きます。

不思議と、恐れはありません。

ただ、あなたが大丈夫かだけが心配です。

恋愛ドラマで私より先に泣いていたあなたを、置いていくことが胸に刺さります。

あなたは本当に、優しすぎる人です。

私は子宮全摘術を受け、子どもを産めない体になりました。

それでもあなたは、「子どもが全てじゃない、君となら幸せになれる」と言ってくれました。

拒もうとした私の手を、あなたは当たり前のように握り返しました。

その温度が、どんな薬よりも私を生き返らせました。

病室の窓から差す朝の光の中で、あなたはぎこちない手つきでパンをちぎってくれました。

洗濯物に紛れた私のハンカチを、丁寧にアイロンがけしてくれた夜もありました。

どれも小さな出来事なのに、私には世界のすべてでした。

私は良い妻だったでしょうか。

最後まで寄り添えず、迷惑ばかりかけてしまいました。

「ほんとに私を選んでよかったの」と尋ねるたび、あなたは笑ってうなずきました。

その笑顔に、私は何度も救われました。

私がいなくなったあと、あなたはきっと深い穴に落ちるでしょう。

それでも、お願いがあります。

生きてください。

幸せになれ、なんて簡単には言えません。

泣いてもいい、立ち止まってもいい、それでも生きていてください。

私たちの時間を覚えているのは、あなただけだから。

泣き虫さん、あなたと同じ景色を歩けてよかった。

指輪の跡が薄れていく日が来ても、私の感謝は薄れません。

ありがとう。

さよならの代わりに、あなたの明日をお願いします。

生きて。

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