
私の命は、まもなく静かに尽きます。
不思議と、恐れはありません。
ただ、あなたが大丈夫かだけが心配です。
恋愛ドラマで私より先に泣いていたあなたを、置いていくことが胸に刺さります。
あなたは本当に、優しすぎる人です。
※
私は子宮全摘術を受け、子どもを産めない体になりました。
それでもあなたは、「子どもが全てじゃない、君となら幸せになれる」と言ってくれました。
拒もうとした私の手を、あなたは当たり前のように握り返しました。
その温度が、どんな薬よりも私を生き返らせました。
※
病室の窓から差す朝の光の中で、あなたはぎこちない手つきでパンをちぎってくれました。
洗濯物に紛れた私のハンカチを、丁寧にアイロンがけしてくれた夜もありました。
どれも小さな出来事なのに、私には世界のすべてでした。
※
私は良い妻だったでしょうか。
最後まで寄り添えず、迷惑ばかりかけてしまいました。
「ほんとに私を選んでよかったの」と尋ねるたび、あなたは笑ってうなずきました。
その笑顔に、私は何度も救われました。
※
私がいなくなったあと、あなたはきっと深い穴に落ちるでしょう。
それでも、お願いがあります。
生きてください。
幸せになれ、なんて簡単には言えません。
泣いてもいい、立ち止まってもいい、それでも生きていてください。
私たちの時間を覚えているのは、あなただけだから。
※
泣き虫さん、あなたと同じ景色を歩けてよかった。
指輪の跡が薄れていく日が来ても、私の感謝は薄れません。
ありがとう。
さよならの代わりに、あなたの明日をお願いします。
生きて。