カテゴリー: 恋愛

好きだった人のこと、一緒にいられた時間、終わってしまった恋のこと。恋愛の話は、泣ける話の中でも特別な痛みと温かさを持っています。実話風の短編から長編まで、恋する気持ちと別れの切なさを丁寧に描いた作品を集めました。

はね出しの花が毎月消える

店の奥、水道の脇の白いバケツには、売り物にならないはね出しの花が挿してある。毎月14日、そこから一輪だけが消える。電話をかけてくるのは毎回ちがう人で、みんな22…

彼が灯さなかった分校

昭和三十四年の奥能登。電気の来ない集落の分校で、十九歳のわたしは毎晩ランプの火屋を磨いていた。ようやく電線が届いた夜、村中に灯りがともるのに、分校だけが暗いまま…

頂に届けたふたつの櫛

女人禁制の霊山を担ぐ強力の俺と、頂を焦がれた許婚のスズ。彼女が遺した黄楊の櫛に託された『片割れが待っている』という言葉の本当の意味を、俺は雲海の頂で知る。昭和の…

彼が名を彫った二本の若木

子どもは望めないと告げられた日、私は好きだからこそ、彼に別れを切り出した。けれど彼は、裏の畑に植えた二本の若木の根元に、生まれるはずだった子の名を彫った名札を、…