カテゴリー: 家族

家族のことを書いた話は、どれも胸に刺さります。当たり前すぎて気づかなかった愛情、不器用すぎて伝わらなかった気持ち、もう会えない人のことを思い出す瞬間。父、母、子供、祖父母——家族にまつわる感動する話をお届けします。

父の名字

血のつながらない父を、私はずっと父だと思えませんでした。無口で不器用なその人が、菓子の缶にひそかに隠していたもの。遺された手帳のたった一行が、すれ違い続けた親子…

母が遺したフィルム

母が中古のフィルムカメラで撮り続けていたのは、なんでもない私の毎日でした。つまらないと突き放した息子が、遺されたフィルムを現像して初めて知る、本当の宝物。港町で…

天国のママへ

妻を病で亡くし、四歳の息子と二人になった父。ある日、息子が急に「ひらがなを教えて」と言い出します。その理由を保育園の先生から電話で聞かされたとき、父は台所の床に…

三針の返し縫いのコート

雪深い城下町のお直し屋で、母は朝暗いうちからミシンの前に座り続けていました。十五の誕生日にもらった紺のダッフルコートを、私は恥ずかしいと思いました。裏の裾に入っ…

ほどこしと親切

昭和五十年代、紡績の町に来た巡業サーカス。切符売場の前で、七人の子を連れた父親が立ち尽くした夜の感動する話です。左官職人の父が見せた、たった一言の優しさ――「ポ…

最高のママ

妻を亡くした港町の調律師に残されたのは、八歳の娘と三歳の息子でした。幼稚園の運動会『おやこでダンス』、入場門に駆け出した小さな影――藍色の割烹着と子守歌が紡ぐ、…

祖母から孫への想い

父の借金、働き詰めの母、古い服しか着ない祖母。大学に落ちた春、俺の部屋に祖母が持ってきたのは、使い込まれた手提げ袋だった。通帳の一頁目に並ぶ日付の意味を知ったと…

娘の望み

六歳の娘が、こづかいを少しずつ貯めて、買おうとした、たった一つの願い。妻を亡くし印刷工場で残業に追われる父と娘の絆を描いた泣ける話です。本当に大切なものを置き去…

母が売りに行ったカメラ

群馬の桐生でのこぎり屋根の工場を壊す解体屋になった十七歳の私に、母が誕生日に贈った一本の単焦点レンズ。写真機店の古い帳面と、玄関で毎日拭かれていたサンダルの底が…