虐めから守ってくれた兄
中学生の頃、学校で虐めに遭っていた。
教室に入る勇気が無く、いつも保険室に通っていた。
虐めの事は家族にも言っていない。
ただ私の我儘で保険室に通っているだけ。そんな風に教師や両親は思っていた。
虐めは段々とエスカレートし、また陰湿だった…。
でも周りに心配を掛けたくなくて、いつも無理して笑っていた。
※
辛くて孤独でどうしようもなくて、死んでしまおうと決心した日の事…。
高校生の兄が修学旅行から帰って来て、私にお土産をくれた。
どこかのドライブインに売っているような、キーホルダーのオルゴール。長崎に行って来たはずなのに…。
幼い頃からいつも兄と一緒に居たが、兄にはいつもイジメられた記憶しかない。
だから長崎のお土産を私にだけくれないのだろう…。
そう思うと何だか学校での虐めと重なり、私はそのお土産を
「こんなのいらない!!」
と投げつけてしまった…。
すると、その衝撃でオルゴールが鳴った。
曲名は知らないけど、
『涙など見せない強気なアナタをこんなに悲しませてるのは誰なの?』
という歌詞の曲が…。
兄は何も言わずにそのお土産を拾おうとしゃがんだ。兄は泣いていた。
初めて兄が泣いているのを見て呆然としていると、兄がポソリと言った。
「お前をイジメて良いのは、兄貴の俺だけだ。
それ以外のヤツがお前を虐めるのは許せない。
俺は知ってるから。お前が家で我慢して笑ってる事。
小さい頃からいつも俺の前で泣いてたんだから、我慢なんかしなくて良いんだぞ。
俺はお前をイジメてばかりの兄貴だけど、他人に妹を虐められて黙っていられる兄貴じゃないからな」
その言葉を聞いて、私は号泣。
学校の虐めの事を全て吐き出しました。
泣き過ぎて喘息で咳き込みながら、全部…。
兄は横に座って聞いてくれていました。
全部話し終わると、
「よく頑張った」
と言って頭をポンポンと撫で、
「今日は寝ろ。明日は学校に行かなくて良い」
と言って部屋から出て行きました。
それから少し経つと、一階で母親と兄が会話している声が聞こえてきました。
※
翌日から暫く学校を休み、再び登校すると、虐めは無くなっていました。
教師に聞くと、兄が中学校の教員室にブチ切れながら乗り込み、虐めの事を伝えたようでした。
高校の生徒会長が乗り込んで来たため、教師も慌てて虐めに対して動き始めました。
その結果、私を含め多人数が虐めの被害に遭っていた事も判明しました。
※
その何年か後、私は現在の旦那と知り合いました。
結婚式を挙げた時、兄貴は
「小さい頃から、俺は妹をイジメて泣かして来た。
でも、妹を虐めるヤツは俺は許さない。
どうかこれからは、俺の代わりに守ってやってくれ」
と旦那に告げました…。
※
兄ちゃん、今日は兄ちゃんの結婚式だよ。
お返しに今日は私が兄ちゃんを泣かすから。