ママの棺
一歳半で母を見送った友人は、母の顔も声も覚えていません。それでも、眠る子の背中を二回叩いてひとつ撫でる手つきだけが、二十一年後の今も彼女の手に残っていました。金…
一歳半で母を見送った友人は、母の顔も声も覚えていません。それでも、眠る子の背中を二回叩いてひとつ撫でる手つきだけが、二十一年後の今も彼女の手に残っていました。金…
余命を隠して兄だけを頼った妹が繰り返した「迷惑掛けてゴメンね」。その言葉が二十年前の冬、簞笥の引き出しの前から始まっていたと知ったとき、兄に残されたものとは。学…
尾道の坂下の小さなパン屋に毎週日曜、若い父と三歳の男の子が来る。注文はクリームパンと『おかーちゃんのぶん』。眠り続ける母への贈り物と思われたパンに隠された、三歳…
両親が消えた冬、十一歳の兄は六歳の弟をたった独りで守り抜いた。万引きで捕まり引き離されて四十年、閉店間際の市場を訪ねた弟は、乾物屋の老婆から兄の秘密を聞かされる…
心肺停止で運ばれた八十八歳の夫に、八十四歳の妻が静かに願い出たのは、自らの手で行う心臓マッサージでした。雪の夜の救急外来で研修医が見届けた夫婦の最期の時間を描く…