父を護衛する猫
父が突然亡くなった。
うちの猫のみぃは、父の行く先行く先に付いて行く猫だった。
「こいつはいつも俺の後を付いて来るんだ。俺の護衛なんだ」
と父は生前、少し自慢気に言っていた。
※
父の亡骸が、病院から自宅に帰って来た。
手を組み、布団に寝ている父。
すると、みぃが私達の前を通り、父の布団の中に入った。
冷たくなった父の横に寄り添って寝ていた。
その光景を見て、物凄く涙が出た。
猫にも解るのかな。
最後のお別れだということが…。
※
そして父が棺に入った夜。
家族だけの最後の夜。
みぃは棺の上に乗り、一生懸命、父の顔の見える扉をガリガリと開けようとしていた。
砂を掘るように、一生懸命開けようとしていた。
本当に一晩中、みぃは必死だった。
その様子を見て私達は泣いた。
※
父がお骨になった日。
もう一生、父の顔を見られなくなったあの日。
突然みぃは居なくなった。
みぃは父に付いて行ったのだろう。
「こいつはいつも俺の後を付いて来るんだ。俺の護衛なんだ」
そう言っていた父の言葉を思い出した。
本当にそうだった。
本当は私達も付いて行きたいくらいだった。
その代わり、みぃが付いて行ってくれたんだ。
※
父の四十九日、ふらっと野良猫が庭に迷い込んで来た。
居なくなったみぃは女の子だったけど、今度は男の子の猫だった。
ずっとうちの前で泣いていた。
その猫をどうしても放って置けなかった。
今もうちに居る。
そういう繋がり。
大切にして行きたい。
みぃも父も、その姿は無くとも、何か別の形で傍に居てくれるのだと信じている。