彼女からの最後のメール

公開日: 恋愛 | 悲しい話

スマホを持つ人(フリー写真)

あの日、俺は彼女と些細な事でケンカをしていた。

お互い険悪な状態のまま、彼女は車で仕事へ行った。

俺は友達に会い、彼女の愚痴を言いまくっていた。

そして彼女の仕事が終わる頃にメールを送った。

相変わらず内容は、ああでもないこうでもないと、くだらない遣り取りだった。

そのうち彼女から返信が来なくなったが、ケンカ中だったので気にも留めなかった。

1時間ほど経つと、彼女の携帯から電話が掛かって来た。

俺はわざと面倒くさそうに出た。

「はい」

そしたら受話器の向こうからは、彼女ではなく別の女の人の声で

「あんたのせいだ!!

あんたが殺した!」

と、凄い勢いで怒鳴っていた。

俺が訳も解らず戸惑っていると、今度は落ち着いた男の人に代わった。

彼女は車で電柱に正面から突っ込み、死んだと言う。

「恐らく運転中のメールが原因の、不注意による事故でしょう」

電話の向こうで、警官だと思われる落ち着いた男の人がそう言っていた。

放心したまま電話を切ると、俺の携帯が1件のメールを受信しました。

それは、事故直前の彼女からのメールでした。

「何か意地張っちゃってごめんね」

俺は彼女のご両親からひどく避けられ、お葬式にも顔を出させてもらえなかった。

まだ彼女に…、

「俺の方こそごめん」

と、返信出来ていないんだ。

そう言いたかった。

ごめんって言いたかった。

そして本当なら、今もずっと一緒に居たかった…。


note 開設のお知らせ

いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

泣ける話・感動の実話まとめ - ラクリマ | note

最新情報は ラクリマ公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

病室

足りない時間

私は医師として、人の死に接する機会が少なくありません。しかし、ある日の診察が、私の心を特別に痛めつけました。 少し前、一人の若者に余命宣告をすることになりました。 「誠に…

花を持つ女性(フリー写真)

彼女の嘘

あなたは本当に俺を困らせてくれたよね。 あなたと付き合った日。 朝のバスでいきなり大声で、 「付き合ってください!」 そんな大声で言われても困るし。 と言…

親子(フリー写真)

娘が好きだったハム太郎

娘が六歳で死んだ。 ある日突然、風呂に入れている最中に意識を失った。 直接の死因は心臓発作なのだが、持病の無い子だったので病院も不審に思ったらしく、俺は警察の事情聴取まで受…

花と手紙(フリー写真)

彼女が遺した手紙

私(晃彦)には幼稚園から連れ添ってきた恋人(美咲)がいる。 私が高校を卒業し、就職してからも同居し、貧乏ながらも支えてくれた掛け替えのない存在。 プロポーズの決心をしてから…

カップルの後ろ姿

届かぬ想い

関係を迫ると、「あなたは紳士じゃない」と言われた。 けれど、関係を迫らなければ、「あなたは男じゃない」と責められた。 何度も君の部屋を訪ねると、「もっと一人の時間が欲しい…

女性の後ろ姿

ずっと一緒だから

もう、あれから二年が経った。 当時の俺は、医学生だった。そして、かけがえのない彼女がいた。 世の中に、これ以上の女性はいない。本気でそう思えるほど、大切な存在だった。 …

女性の後ろ姿

君がくれた、小さな勇気

初めて彼女に会ったのは、内定式のときだった。同期として顔を合わせた。 聡明を絵に描いたような人だった。学生時代に書いた論文か何かが賞を獲ったらしく、期待の新人として注目されてい…

手を繋いで歩く夫婦(フリー写真)

たった一つの記憶

私の夫は、結婚する前に脳の病気で倒れてしまい、死の淵を彷徨いました。 私がそれを知ったのは、倒れてから5日も経ってからでした。 夫の家族が病院に駆け付け、携帯電話を見て私の…

カップル

彼女が遺した約束

大学時代、私たちの仲間内に、1年生の頃から付き合っていたカップルがいました。 二人はとても仲が良く、でも決して二人だけの世界に閉じこもることなく、みんなと自然に接していました。…

合格祈願の絵馬(フリー写真)

もう戻って来ない彼女

大好きだった彼女と別れた。 理由はシンプル。 俺が早稲田に落ちて浪人が決定したから。 「二人とも大学卒業したら結婚しようね」 こう言ってくれた彼女。 でも…