膝枕

公開日: 心温まる話 | 恋愛

オフィスの机(フリー写真)

昔、飲み会があるといつも膝枕をしてくれる子が居たんだ。

こちらから頼む訳でもなく、何となくしてもらう感じだった。

向こうも嫌がるでもなく、俺を膝枕しながら他の奴らと飲んでいる、という感じ。

別に付き合っている訳でもなかった。単なる会社の同僚。

可愛かったけど。

セクハラという言葉が世間に広まり始めた頃、俺も上司から

「宴会であまり破目外すなよ」

とサラッと言われたんだ。

すぐに『あの子、本当は嫌だったんだな…』と少し凹んだ。

上司に相談するほど嫌われていたのかってさ。

宴会で膝枕しなくなって暫く経ち、一人で年末に休日出勤していた時、たまたまその子が会社にやって来たんだ。

どうも昨日貰ったカレンダーを忘れていたらしい。

もう良い大人だから、例の事件からも特によそよそしくはならなかったんだけど、やはり二人きりだと気まずい。と言うか会話し辛い。

だから最初にちょっと挨拶しただけ。

それで、その子がカレンダーを取ったからもう帰るのかと思ったら、こっちに来たんだ。

『何か用か?』とは思いつつも、こちらからは話し掛けずにパソコンを見ていたら、

「あのさ」と話し掛けてくる。

「何?」とこちらも普通に返すと、

「最近、膝枕してこないよね?」と言ってきた。

『嫌がってるのはお前だろ』と思いつつも、

「いや、セクハラ話題になってるし(笑)」

と返すと、営業所内の喫煙エリアにあったソファーの方へ行って座り、膝をポンポンと叩く。

「何やってんの?(笑)」と聞いたら、

「おいで」って。

それが今の嫁さん。

関連記事

ペット

ペットからの10のメッセージ

1. 私の一生は、せいぜい10年から15年ほどしかありません。 その短い生涯の中で、ほんの少しでもあなたと離れることは、とても寂しく、胸が張り裂けそうになります。 …

オムライス(フリー写真)

本当の友達

二十年ほど前の話。 当時、俺の家は片親で凄く貧乏だった。 子供三人を養うために、母ちゃんは夜も寝ないで働いていた。 それでもどん底の生活だった…。 俺は中学を卒…

おばあちゃんの手(フリー写真)

祖母から孫への想い

俺は母とおばあちゃんの三人で暮らしている。 母と親父は離婚していない。 パチンコなどのギャンブルで借金を作る駄目な親父だった。 母子家庭というのはやはり経済的に苦しく…

バラの花束(フリー写真)

大きなバラの花束

接客を何年か担当してくれていた優秀な女性スタッフが、その店を辞めることになった。 店長は、一生懸命仕事をしてくれた彼女に何かお礼がしたかった。 いよいよ彼女の最後の出勤の日…

家族の手(フリー写真)

いつかの日曜日

私が4歳の時、父と母は離婚した。 当時は祖父母と同居していたため、父が私を引き取った。 母は出て行く日に私を実家へ連れて行った。 家具や荷物が沢山置いてあって、叔母の…

雨

雨の中の青年

20年前、私が団地に住んでいた頃のことです。 ある晩、会社から帰宅すると、団地前の公園で一人の男の子が、雨の中傘もささず、向かいの団地をじっと見つめていました。 その様子…

カレー

静かなテーブルの上で

ファミレスで仕事をしていたときのことです。 隣のテーブルに、三人連れの親子が座りました。 若作りした茶髪のお母さん、中学一年生くらいの男の子、そして小学校低学年と思われる…

チョコレート(フリー写真)

チョコをくれたお姉さん

少し嬉しかった話。 去年の冬、高校受験もラストスパートの時の話。 中学の成績はなかなかだったから、志望校は進学校にした。 しかし中学3年生になってから全然成績が上がら…

犬

少年とテツ

1月の寒い朝、思い出す少年がいます。 当時、私は狭心症で休職し、九州の実家で静養していました。 毎朝、愛犬テツとの散歩中、いつも遅刻ギリギリの不良少年に出会いました。 …

浜辺で子供を抱き上げる父親(フリー写真)

不器用な親父

俺の親父は仕事一筋で、俺が小さな頃に一緒にどこかへ行ったなんて思い出は全く無い。 何て言うのかな…俺にあまり関わりたがらないような人って感じ。 俺は次男だったんだけど、兄貴…