仲直りのビーフシチュー

ビーフシチュー

昨日の朝、私は妻と言い争いをしてしまった。原因は、夜更かしによる私の寝不足で、朝の機嫌が非常に悪かったことだ。

「また仕事か」とぼやきながら起きる私。妻は私の気難しさを知っているため、何も言わず静かにしていた。

しかし、その沈黙がかえって私を苛立たせてしまい、妻が手間をかけて作った朝食を無思慮に床にぶちまけてしまったのだ。

妻は泣きながら、味噌汁を流しに捨てていた。私は後悔しつつも、何も言わずに会社へと出かけてしまった。

夜、帰宅するのが不安だった。もしかしたら妻は実家に帰ってしまっているかもしれないと心配していたが、家の中は明るく、美味しい匂いが漂っていた。

勇気を出してドアを開けると、妻が私の好物であるビーフシチューを抱えて待っていた。

「これで仲直りしよう」と優しい笑顔で言う彼女。

私はその瞬間、朝のことを心から謝るべきだったと気づいた。

妻に対する思いやりの欠如を痛感した私は、今後は二度と妻に八つ当たりをしないと固く心に誓った。

朝の味噌汁、実は本当に食べたかったのだ。


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