沢山のキッス

クリスマスプレゼント(フリー写真)

クリスマスが近付いた時期の話です。

彼は三才の娘が包装紙を何枚も無駄にしたため、彼女を厳しく叱りました。

貧しい生活を送っていたのに、その子はクリスマスプレゼントを包むための大切な包装紙で箱を作り、クリスマスツリーの下に置いたのです。

叱られた娘は、その箱を父親に渡しながら

「パパ、これはパパのためよ」

と言いました。

箱を開けてみると中は空で、何も入っていませんでした。

父親は娘に尋ねました。

「プレゼントは空っぽの箱だけかい?」

娘は目に一杯涙を溜め、父親を見上げて言いました、

「パパ、空っぽではないの。沢山の私のキッスを入れたの。これは全部パパのためなの」

父親は呆然としました。そして娘を抱き上げ、許しを請いました。

それ以来、父親は娘から貰ったその箱を大切に保管し、いつもベッドの傍に置いていました。

そして元気を失った時にその箱を開け、娘がどれほど大きな愛を持って自分のためにキッスを入れたかを思い出し、大きな慰めを受けたのです。

関連記事

柴犬(フリー写真)

犬が結んだ家族の絆

昔、うちでは一匹の犬を飼っていた。 名前はナオ。 ご近所の家で産まれた犬を、妹がみんなに相談もしないで貰って来たのだ。 当時うちの妹は中学生、俺は高校を卒業して働いて…

彼女(フリー写真)

彼女の導き

もう2年も前の話になる。 当時、俺は医学生だった。彼女も居た。 世の中にこれ以上、良い女は居ないと思う程の女性だった。 しかし彼女はまだ若かったにも関わらず、突如とし…

教室

笑顔のつながり

私の中学時代は、新興住宅地に位置しており、ほとんどの生徒が持ち家に住む裕福な家庭出身でした。お母さんが専業主婦である家庭が多く、いじめや仲間はずれが皆無という幸せな環境でした。 …

赤ちゃんの手を握る母の手

最後の親孝行に

無職、片桐康晴被告は、京都市伏見区桂川河川敷で2006年2月1日、認知症の母親の介護で生活苦に陥り、母親を殺害し自身も無理心中を図った。 その事件の初公判は19日に行われた。 …

警察官の方(フリー写真)

人と人との出会い

何年か前の、5月の連休中のこと。 あるご夫婦がライトバンのレンタカーを借り、佐賀から大分県の佐伯(さいき)市を目指して出掛けた。 佐伯市からは夜23時に四国行きのフェリーが…

カップル(フリー写真)

彼女の日常

俺には幼馴染の女の子が居た。 小学校から中学校まで病気のため殆んど普通の学校に行けず、いつも院内学級で一人で居るせいか人付き合いが苦手で、俺以外に友達は居なかった。 彼女の…

カップル

傷跡を越えて

私は生まれながらに足に大きな痣があり、それが自分自身でもとても嫌いでした。その上、小学生の時に不注意で熱湯をひっくり返し、両足に深刻な火傷を負いました。痕は治療を重ねましたが、完全に…

夫婦(フリー写真)

奥さんの日記

嫁の日記を盗み読みしたら、いつも昼飯は納豆ご飯やお茶漬けしか食べていないことが判った。 友達とファミレスに行くのも月に一度と決めているらしい。 俺に美味しい料理を食べさせた…

カップルの足(フリー写真)

母の持つ愛情

当時の俺は大学一年、彼女は大学四年。忘れもしない三年前の出来事。 大学に入ってすぐ、俺は軟式野球のサークルに入った。 サークルのマネージャーの中に彼女が居た。 一目惚…

工事現場(フリー写真)

鳶職の父

公用で M高校へ出かけたある日のことだった。 校長先生が私達を呼び止められ、 「もし時間がありましたらお見せしたいものがありますので、校長室までお越しください」 と…