ロクな大人
この前の、子供の日。
夫の親、兄弟、親戚、一同が集まった席で、いつものように始まった大合唱。
「一人っ子は可哀想」
「ロクな大人にならん」
「今からでも第二子は遅くない」
「今なら高度医療で何とかなるやろ?」
困った顔をしながら苦笑いを浮かべて、適当に生返事をしてやり過ごすしか、私達夫婦には方法が無くてね。
うっかり事情が知れたら、もっと傷付けられる。
ああ、仕方が無い人達だ。我慢しよう。嵐が過ぎるまで…と、そう思っていたのだけど…。
今年、小学5年生になる息子がその時、鋭い口調で言い出した。
「ロクな大人の『ロク』って何さ?
嫌そうに聞いている人間に嫌な言葉を言い続けるのが『ロク』なんか?
ここに居るみんな、俺以外はみんな兄弟が居るロクな大人やろうもん。
ロクな大人の『ロク』がこう言うことなら、俺はロクな大人にならんでよか!
ああ、よかったったい。俺はロクな大人になれん一人っ子で。
ちぃーともかわいそうなこと、なかやっか。一人っ子ばんざい!」
一同が静まり返って、決まりが悪そうに視線をあちこちに泳がせ始めた時、
「母さん、俺を産んでくれてありがとう。
一人だけでも俺を産んでくれてありがとうな」
そう照れくさそうに言うと、ちまきを2、3個引っ掴んで、
「△△の家に遊びに行って来るったい。行ってきまーす!」
と飛び出して行ったよ。
※
「今日と明日は、俺が家事やるけん。母さんはゆっくりしときー。
母の日やけん。お金かからんいい孝行やろもん。俺ってあったまいー」
今、息子は昼ご飯にとホットケーキを焼いているようです。
でもね、母の日のプレゼントは先週にもう貰ったと、私は思っているんだ。
えへへ、親馬鹿だけど、良い息子に育ってくれたのが嬉しくて。
誰かに聞いてもらいたかったんだ。