想い出の贈り物

公開日: 家族 | 心温まる話

バイク

昔のこと、15歳のときに親のスーパーカブを持ち出した私は、その後の一件を境に、バイクの虜となった。

次々と乗り換えていったバイクたち。そして、幸せな家族との日常。

しかし、15年前の夏、突如として妻を亡くした。

私と、小さな子供二人。あの日からの15年は、彼らにとって母のいない日々となった。

あの悲しい夏から時は流れ、15年目のクリスマス。

妻を失ってからの日々、家事、育児、仕事。すべてを一手に引き受けた私。バイクの乗り心地を忘れた日々が続いた。

参観日、運動会、私たち三人の家族の時間。

きっと、子供たちは他の家族を羨ましく思ったことだろう。

それでも彼らは、一つも間違いを犯すことなく、立派に成長してきた。

そして、二人の子供たちは、それぞれの道を歩み始めた。

ある日、息子が私のバイクの話を持ち出した。

「一番のお気に入りはどれ?」と彼に問われ、私は若かりし頃の思い出とともに、妻との出会いのバイクの話をした。

クリスマスイブ。

子供たちが帰宅する。不意の彼らの帰宅に驚き、少し酒を飲み過ぎてしまった私は、美しい夢を見た。

妻が、夢の中で私を待っている。彼女の美しい姿、そして私の懐かしいバイクの音。

翌朝、驚きの出来事が。

子供たちが、私へのクリスマスプレゼントとして、あの懐かしのモンキーを贈ってくれたのだ。

感謝の涙が止まらなかった。

久しぶりのバイクの音色、それはまるで過去と現在が繋がった瞬間のようだった。

ありがとう、とただ心の中で呟く。

この春、久しぶりにバイクの風を感じながら、遠くの地を目指そうと思う。

関連記事

手を繋ぐ母と娘(フリー写真)

最高のママ

もう十年も前の話。 妻が他界して一年が経った頃、当時八歳の娘と三歳の息子がいた。 妻がいなくなったことをまだ理解出来ないでいる息子に対し、私はどう接してやれば良いのか、父親…

猫(フリー写真)

会いに来てくれた猫

五年前に飼っていた茶トラ猫。 当時、姉が家出同然で出て行ってしまい、家の雰囲気が暗かったのを憶えています。 そんなこともあり、私は家では出来るだけ明るく振る舞っていましたが…

家族の影(フリー写真)

家族で笑った思い出

数年前に、実家の一家の大黒柱である父が倒れた。 脳梗塞で、一命は取り留めたものの麻痺が残ってしまった。 母は親戚(成年後見人)に上手いことを言われて離婚させられた。 …

サイコロ

おばあちゃんの願い

子どもの頃、家庭の事情でおばあちゃんの家に預けられた俺。見知らぬ土地に来て間もないこともあり、友達はおらず、孤独を感じていた。 その寂しさを紛らわせるため、ノートに自分で考えた…

手を繋ぐ夫婦(フリー写真)

最高の両親

ある女性が学生の頃に暴行されました。 男性不信になった彼女はずっと男性を避けていましたが、会社勤めをしているうちに、そんな彼女に熱烈にアタックしてくる人がいました。 その…

浜辺の母娘(フリー写真)

天国へ持って行きたい記憶

『ワンダフルライフ』という映画を知っていますか? 自分が死んだ時にたった一つ、天国に持って行ける記憶を選ぶ、という内容の映画です。 高校生の頃にこの映画を観て、何の気無しに…

パソコンを操作する手(フリー写真)

遅れて届いた母からのメール

私が中学3年生になって間もなく、母が肺がん告知を受けたことを聞きました。 当時の自分はそれこそ受験や部活のことで頭が一杯で、 『生活は大丈夫なんだろうか』 『お金は…

結婚式(フリー写真)

一生忘れない結婚式

本人から聞いたのか共通の友人から聞いたのかあやふやだけど、その子は物心付く前にお母さんが亡くなって、父親に育てられたという話は耳にした事があった。 結婚式後に聞いた話だけど、何か…

結婚式場(フリー写真)

叔父さんの血

俺には腹違いの兄貴が居る。 俺が小学5年生、兄貴が大学生の時に、両親が子連れ同士の再婚。 一周りも年が離れていたせいか、何だか打ち解けられないままだった。 ※ 大学入試…

瓦礫

再建の約束

太陽の光がほんのりと残骸の上を照らしていた。災害により変わり果てた風景の中、一つの臨時の避難所が静かな緊張感を持っていた。 「若者の代表として、一つだけ言いたいことがあります……