母ちゃんとラーメン
今日、俺は珍しく母ちゃんを外食に誘った。
行き先は、昔からよく行く馴染みのラーメン屋だった。
俺は味噌ラーメンの大盛り、母ちゃんは味噌ラーメンの並盛りを頼んだ。
「昔からここ美味しいのよね」
と、柄にもなく顔に皺を寄せて笑っていた。
ラーメンが出来上がると、俺も母ちゃんも夢中で麺をすすっていた。
あまりにも母ちゃんがニコニコしながら食べているものだから、俺もつられて笑っちまったよ。
暫く経って、ラーメンを食い終わった俺は、ふと母ちゃんの方を見たんだ。
ラーメンの器に浮かぶチャーシューが一枚、二枚、三枚…。そのチャーシューを捲ると、麺がまだ沢山余っていた。
母ちゃんは俺の方を申し訳なさそうに見て、
「ごめんね。母ちゃん、もう年だから。ごめんね」
と繰り返していた。
「んなもんしゃーねーべ」
と言うと、俺は母ちゃんの残したラーメンをすすった。
そういやガキの頃、よく無理して大盛りを頼んで、結局食べ切れなくて母ちゃんに食ってもらってたっけ。
いつの間にか立場も逆転。あんなに若かった母ちゃんの顔も今じゃ皺だらけで、背丈も頭一個分違う。
その皺の数ほど、今まで散々迷惑掛けたんだろうなって思うと、悔しさと不甲斐なさで涙が出て来る。
母ちゃん、こんな俺を今まで育ててくれてありがとう。
俺、立派な社会人になるわ。