欲しかったファミコン

公開日: ちょっと切ない話 | 家族 | 心温まる話 |

母の絵(フリー写真)

俺の家は母子家庭で貧乏だったから、ファミコンが買えなかった。

ファミコンを持っている同級生が凄く羨ましかったのを憶えている。

小学校でクラスの給食費が無くなった時など、

「ファミコン持ってないやつが怪しい」

なんて、真っ先に疑われたっけ。

「貧乏の家になんか生まれて来なきゃ良かった!」

と悪態をついた時の母の悲しそうな目、今でも忘れられないなぁ…。

どうしてもファミコンが欲しくて、中学の時に新聞配達して金を貯めた。

これでようやく遊べると思ったんだけど、ニチイのゲーム売り場の前まで来て買うのをやめた。

その代わり妹にアシックスのジャージを買ってやった。

今まで俺のお下がりを折って着ていたから。

母にはハンドクリームを買ってやった。いつも手が荒れていたから。

去年の結婚式前日、母から錆びたハンドクリームの缶を、大事そうに見せられた。

泣いたね…。

初めて言ったよ。「生んでくれてありがとう」って。

関連記事

カップル

光の中での再会

一昨年の今日、僕は告白をしました。それは、生まれて初めての告白でした。 彼女は、全盲でした。 その事実を知ったのは、彼女がピアノを弾いているのを聴いて、深く感動した直後の…

ビル

予期せぬ守り神

内定式で初めて彼女と出会った。彼女は私たちの同期だった。 彼女は聡明の代名詞のような人だった。学生時代の論文で賞を受けるほどの才女で、周囲からは期待の新星と見なされていた。 …

牢屋

想像の中の少女と共に

大戦中、ドイツ軍の捕虜収容所に居たフランス兵たちのグループが、捕虜生活の苛立ちから来る仲間内の争いや悲嘆を紛らわすために、共同で「脳内共同ガールフレンド」を創り出した話。 彼ら…

カップル

傷跡を越えて

私は生まれながらに足に大きな痣があり、それが自分自身でもとても嫌いでした。その上、小学生の時に不注意で熱湯をひっくり返し、両足に深刻な火傷を負いました。痕は治療を重ねましたが、完全に…

通学路(フリー素材)

私を育ててくれた母

私は産まれてすぐ親に離婚され、両親共に引き取ろうとせず、施設に預けられました。 そして三歳の時に、今の親にもらわれたそうです。 当時の私にはその記憶がなく、その親を本当の…

レストラン(フリー写真)

父の気持ち

某信用金庫に勤める二十歳の女性が、初月給を親のために使って喜んでもらおうと、両親をレストランに招待しました。 お母さんは前日から美容院へセットに行ったりして大喜び。 ところ…

親子(フリー写真)

お袋からの手紙

俺の母親は俺が12歳の時に死んだ。 ただの風邪で入院してから一週間後に、死んだ。 親父は俺の20歳の誕生日の一ヶ月後に死んだ。 俺の20歳の誕生日に、入院中の親父から…

小学生の女の子(フリー写真)

覚えたてのひらがな

ある日、妻が長女をこっぴどく叱っていた。 私「キョーコが何かしたのか?」 妻「私の車を釘みたいなもんでひっかいとるとよ!」 私「何でそんなことしたん?」 と聞…

ラグビー場(フリー写真)

ラグビーと恩師

私は高校時代に万引きをして、人生観が変わりました。 中学から好きだった野球を続ける為に、有名な強豪校に希望して入りました。 しかしボールを触らせて貰えず、毎日ボール拾いばか…

金魚

思いやりと妹への愛情

十年前、私が金魚すくいの店を営んでいた時のことです。 ある日、7歳くらいの女の子と10歳くらいの男の子が兄妹で来店しました。妹は他の子供たちが金魚すくいを楽しんでいるのを興味津…