彼は片耳のイヤホンを外さない
夜10時、佐渡の柿畑から届くビデオ通話。画面の中の彼は、いつも左の耳にだけ片耳のイヤホンを挿していた。聞き逃されるたびに笑い合った2年のあいだに、私は少しずつ片…
夜10時、佐渡の柿畑から届くビデオ通話。画面の中の彼は、いつも左の耳にだけ片耳のイヤホンを挿していた。聞き逃されるたびに笑い合った2年のあいだに、私は少しずつ片…
闘病中の彼女のそばにいたくて、私は会社を辞め、「リストラされた」と嘘をつきました。毎日リンゴをすりおろした病室の日々のあと、葬儀の翌日に渡された二通の手紙には、…
母の家の三和土には、誰も履かない小さなサンダルが、いつも同じ角度で揃えて置いてあった。妹のお古だと、俺はずっと思っていた。彼女の親に別れさせられた秋、母は泣きな…
坂の港町の古本屋で、彼女はいつも閉店間際の詩集の棚に立っていた。「海」と書かれた取り置きの札を挟んだまま、一年間買わずにいた一冊。病が見つかり別れを切り出した彼…