検針票の裏に返事が来る家
検針票の裏に、志津子さんは毎月、鉛筆で返事をくれた。使用量が倍になった冬、二月の雨の午後に見たのは、満杯のまま抜かれていく湯と、指二本ぶんだけ開いた浴室の小窓だ…
検針票の裏に、志津子さんは毎月、鉛筆で返事をくれた。使用量が倍になった冬、二月の雨の午後に見たのは、満杯のまま抜かれていく湯と、指二本ぶんだけ開いた浴室の小窓だ…
結婚した年から、義母の雑巾が毎年十二月に一枚ずつ届いた。使い古しの押しつけだと思い、引き出しにしまい続けた七年。義母が骨折して入院した日、裁縫箱の底に、十二の四…
日曜八時の電話は、八時ちょうどに鳴って一分で切れる。ご飯は食べたか、ならええ、ほな。十一年それだけの電話を、俺は三回に一回わざと取らなかった。ある日曜、実家の勝…
顔合わせの席で、継母が婚約者の祖母と土佐の言葉で笑い合った。少し高くて語尾の跳ねる、私の知らない声だった。12歳の春に「この家で、そのしゃべり方しないで」と言っ…
母の煮物は、私が高校2年の春から急に濃くなった。しょっぱい、と何度も言った。母は笑うだけで、味つけを戻さない。22年後、手首を痛めた母の代わりに台所へ立った私は…