後部座席の犬は窓に向かって鳴く
毎週水曜の十時四十分、介護タクシーの後部座席の犬は、病院の四階の窓に向かって一度だけ鳴いた。窓から出てくる白い袖をご主人のものだと思い込んでいた私は、その窓の本…
毎週水曜の十時四十分、介護タクシーの後部座席の犬は、病院の四階の窓に向かって一度だけ鳴いた。窓から出てくる白い袖をご主人のものだと思い込んでいた私は、その窓の本…
毎週土曜の午後、絵本の棚の前に立つ老人の膝にだけ、店の猫は迷わず乗った。古書店の猫の席に挟まれた四つ折りの紙を、私は長いあいだ見落としていた。老人は一度も猫の名…
契約が切れた週の土曜、譲渡会で最後まで残っていた犬を連れ帰った。毎朝の散歩は、なぜか三丁目の二階の窓の下で止まってしまう。カーテンが十センチ動くたびに、犬はすっ…
トメはいつも階段の四段目にいた。三段目でも五段目でもなく、その段だけが家でいちばんくたびれている。12年ぶりに実家へ戻った俺は、母が直すなと言い張るその板を、入…