母の気持ち
実家に帰省して、また帰る時の事。
俺は母子家庭で仕送りを貰っている癖に、冗談めかしに帰りのタクシー代と電車賃を頂戴と母にせがんだ。
すると母は、
「何言ってんの!うちもキツキツで生活してるのに、自分で払いなさい!」
と怒鳴った。
俺もつい腹が立ってしまい、電話でタクシーを呼び、その後は母とは一言も口を聞かなかった。
※
暫く経った頃にタクシーがうちに来て、俺は何も言わずに家を出て、タクシーに乗り込んだ。
その時、母が財布を持って慌てて外に出て来た。
しかし、その時ちょうどタクシーは発進。
俺はついムキになってしまった事に対する自分の情けなさと、母ヘの申し訳なさと感謝の気持ちと後ろめたさに、後ろを振り向くことができなかった。
タクシーの中で、涙を堪えるのに必死だった。
とても後味の悪い帰省だった。