カテゴリー: 悲しい話

思い切り泣きたいとき、この場所へ来てください。大切な人を失ったこと、届かなかった気持ち、間に合わなかった言葉——悲しい話には、悲しいからこそ伝わる本当のことが詰まっています。号泣できる実話風短編を集めました。

玄関で待っていた

定年になったら一緒にいてやる。そう思い続けた十五年間、猫のチビはずっと玄関で帰りを待っていた。でも、私が戻ったとき、チビはもうそこにいなかった。…

はしゆよ、はむたよお

娘が、六歳で死んだ。 あまりにも突然で、理由を探す暇すらなかった。 ある日、風呂に入れている最中に、娘は意識を失った。 小さな身体が、急に力を失って、呼びかけて…

嫌いだと言い続けた

俺は母親が嫌いだ。 大嫌いだ。 おせっかいなところが嫌いだ。 何よりも、子どもを一番に考えるところが嫌いだ。 大学に入って一人暮らしを始めて、もう二年も経つのに…

10分後の別れ

その夜は、付き合って三年目の記念日でした。 彼は手料理を用意して、私の帰りを待っていてくれました。 ※ けれど私は、仕事が長引いてしまい、約束の時間に帰れません…

作業着のポケットの底

指輪の内側には、サイズの数字のほかに細かい傷が一列だけついていました。二十歳の春に不妊と告げられた私に、作業着のまま駆けつけた彼が差し出した小さな箱。一年後に本…

手首の紐でつながれた夜

中学二年の夏、目の前で幼馴染を失った俺は眠れず、食べられず、夜ごと玄関に立った。そんな俺と兄を結んでいたのは、体育館シューズの白い手首の紐だった。二十年近く経っ…

猫のゆめと過ごした日々

高校生の冬、私の電気毛布の上で産まれた猫のゆめ。出産予定日の十日前に入院したあの日、玄関で待つ猫だったゆめが最後に見せた姿を、娘が二歳になった今、ようやく書き残…

麦茶の氷が鳴らなくなった夏

母は毎年、梅雨が明けると麦茶を製氷皿で凍らせていた。薄まらんように、と。脳の病で手が震えるようになっても、その習慣だけはやめなかった。私はある朝、その製氷皿を落…

戦火を止めた日本の歌声

インドの砂漠地帯で、私は傭兵としてパキスタン軍と対峙していた。 敵味方の区別もつかぬほどの荒涼とした景色の中、銃声が飛び交い、朝も昼もなく砲弾が夜空を裂いていた…