玄関で待っていた
定年になったら一緒にいてやる。そう思い続けた十五年間、猫のチビはずっと玄関で帰りを待っていた。でも、私が戻ったとき、チビはもうそこにいなかった。…
思い切り泣きたいとき、この場所へ来てください。大切な人を失ったこと、届かなかった気持ち、間に合わなかった言葉——悲しい話には、悲しいからこそ伝わる本当のことが詰まっています。号泣できる実話風短編を集めました。
定年になったら一緒にいてやる。そう思い続けた十五年間、猫のチビはずっと玄関で帰りを待っていた。でも、私が戻ったとき、チビはもうそこにいなかった。…
娘が、六歳で死んだ。 あまりにも突然で、理由を探す暇すらなかった。 ある日、風呂に入れている最中に、娘は意識を失った。 小さな身体が、急に力を失って、呼びかけて…
俺は母親が嫌いだ。 大嫌いだ。 おせっかいなところが嫌いだ。 何よりも、子どもを一番に考えるところが嫌いだ。 大学に入って一人暮らしを始めて、もう二年も経つのに…
その夜は、付き合って三年目の記念日でした。 彼は手料理を用意して、私の帰りを待っていてくれました。 ※ けれど私は、仕事が長引いてしまい、約束の時間に帰れません…
弟の航が亡くなる前日、十一年後の兄が過去の自分へ宛てた手紙。風呂場の鼻歌、ベンチの端の背番号十八、青いお守り。葬儀の庭で知った自慢の弟の本当の意味を、静かに綴る…
彼女とは、バイト先で出会った。 年上の彼女は、入った時からどこか気になる存在だった。 「付き合ってる人は居ないの?」 「居ないよ…彼氏は欲しいんだけど」 「じゃ…
第二次大戦が終わり、私は日本の兵士たちの帰国事務に携わっていました。 毎日、留守家族の人々が次々と訪ねてきます。私は机越しに、「ご主人は亡くなられました」「息子…
指輪の内側には、サイズの数字のほかに細かい傷が一列だけついていました。二十歳の春に不妊と告げられた私に、作業着のまま駆けつけた彼が差し出した小さな箱。一年後に本…
結婚当初、私は姑とどうも噛み合わず、会うたびに気疲れしていました。 意地悪されることはありませんでしたが、気さくでよく笑う実母と違い、姑は長年看護士として働いて…
あれは、私の隣の席に座っていた男性が、突然亡くなった日のことでした。 金曜日の夜、お酒を飲んだ帰り道。 電車の中で気分が悪くなり、途中下車した駅のベンチに腰をか…
中学二年の夏、目の前で幼馴染を失った俺は眠れず、食べられず、夜ごと玄関に立った。そんな俺と兄を結んでいたのは、体育館シューズの白い手首の紐だった。二十年近く経っ…
高校生の冬、私の電気毛布の上で産まれた猫のゆめ。出産予定日の十日前に入院したあの日、玄関で待つ猫だったゆめが最後に見せた姿を、娘が二歳になった今、ようやく書き残…
母は毎年、梅雨が明けると麦茶を製氷皿で凍らせていた。薄まらんように、と。脳の病で手が震えるようになっても、その習慣だけはやめなかった。私はある朝、その製氷皿を落…
俺の爺さんは、戦争中に戦地で足を撃たれた。 撤退命令が響き渡り、仲間たちは必死に撤退していったが、爺さんは立ち上がることさえできなかった。 血で濡れた土の匂いと…
インドの砂漠地帯で、私は傭兵としてパキスタン軍と対峙していた。 敵味方の区別もつかぬほどの荒涼とした景色の中、銃声が飛び交い、朝も昼もなく砲弾が夜空を裂いていた…