毎月二日の千円は返さなくていい
二日の午前零時、スマホが一度だけ短く震える。毎月二日の千円は、三年間、同じ五文字のメモを添えて届いた。実家から届いた部費帳の鉛筆の十二行を見つけた夜、私は初めて…
友達のことを、大人になってから改めて思い出すことがあります。一緒に笑ったこと、支えてもらったこと、気づかずに傷つけてしまったこと。友情にまつわる感動する話——友達のありがたさを改めて感じさせてくれる短編をまとめました。
二日の午前零時、スマホが一度だけ短く震える。毎月二日の千円は、三年間、同じ五文字のメモを添えて届いた。実家から届いた部費帳の鉛筆の十二行を見つけた夜、私は初めて…
閉店セールの金物店で、幼なじみは奥の棚だけは売らないと言った。値札のない番地の箱は、日曜の夕方にひとつずつ空になっていく。最後に残った一箱の側面の鉛筆の数字を見…
大学の食堂で、私の前に置かれる茶碗だけがいつも重かった。底の厚い茶碗は7つしかなく、みんなが避けた外れくじなのだと思っていた。3年間そう思い込んだまま、私は一度…
夜勤明けの水曜の朝だけ、私の冷蔵庫から卵がふたつ減る。三年のあいだ、朝ごはんを作りに来る後輩を私は鬱陶しく思っていた。どうせ憐れまれているのだと。彼女が島へ発つ…
昭和三十六年、堤防工事の飯場から転校してきた幼なじみに、私は兄のお下がりの運動靴を貸しました。学級費が消えた日、私は教室で黙りました。四十年後、同じ堤防の改修工…
泣ける話。昭和の山頂測候所で三時間ごとの観測を続けた私と、雪の道を荷を担いで上がってきた歩荷の保坂さん。ひとりで冬を回したあの年、彼は三日に一度登ってきた。四十…
二十年前「あんたは向いとらん」と私を切り捨てた元上司が、山の集落で毎週わたしの魚を買い続けた。泣ける話の長編。捌かなくていいと言い続けた理由と、集落に人が並んで…
四十年前に私を無視した同級生が、二十年ものあいだ匿名で私の漉いた和紙を頼み続けていた。備考欄にはいつも同じ一行だけ。切り落とされる紙の耳こそが破れた本を継ぐ材料…
北関東の工業団地の町に転校してきた、日本語のたどたどしい同級生。わたしは一度だけ、彼を見捨てた。合唱コンクールの日、耳の聞こえないはずの彼の父が客席で立ち上がり…
昭和三十三年、山の村を巡る映写技師だった俺と、声の出ない少年・耕作。ダムに沈む村での最後の上映会は失敗し、別れの言葉を言えないまま俺は坂を下りた。二十三年後に届…
霧の朝、峠の茶屋へ金平糖を提げて上ってくるおばあさん。母を見送ったばかりの娘は、湯を沸かして待つうちに、ハルさんが五十年欠かさず通った峠の地蔵の理由を知ります。…
三十年、引き出しの奥にしまい続けた黄楊の王将。親友との別れを恐れ、約束を捨てて故郷を離れた男が、危篤の報せに、幼馴染の彫った駒を手に三十年ぶりに帰郷する。盤の上…
湯を落とす日の朝、湯守の捨松は桐の小箱から赤いお手玉を見つけた。四十年前の雪の冬、片足を引きずって谷を登ってきた蛍さんが教えてくれた遊びと、北向きの部屋の柱に残…
心に灯る感動の泣ける話。行くあてをなくした娘を拾ったのは、霧深い湖の老いた渡し守だった。夜明けごとに舟提灯を灯し、湖をわたり続けた爺さま。その灯りがある限り、人…
結婚して港町へ嫁いだわたしは、年に一度の盆だけ、幼なじみの八重が営む時計店に腕時計を預けに帰った。「少し遅れるんよ」という小さな嘘。八重が遺した修理伝票の控えに…