音楽の先生がくれた一行
転任前日に音楽の先生がくれた一枚の五線紙を、わたしは読まないまま忘れた。五十三歳のある日、母が熊本の実家を片付けて送ってきた文具箱の底から、その紙が出てきた。万…
転任前日に音楽の先生がくれた一枚の五線紙を、わたしは読まないまま忘れた。五十三歳のある日、母が熊本の実家を片付けて送ってきた文具箱の底から、その紙が出てきた。万…
十三年ぶりに届いた幼馴染からの小包。中に入っていたのは手紙でも電話番号でもなく、子供の頃ふたりで摘んだあの野原の花を押し花にした額縁だった。…
山形・庄内の羽黒門前町で絵馬の板を仕上げていた祖母は、代金の入っていない小絵馬の裏にだけ墨で点をひとつ打ち、焼かずに残していました。掛け所の四十一枚と、九つの冬…
山形・新庄の母子家庭で育った私は、帰省の朝にタクシー代をせがんで母に怒鳴られ、口をきかないままタクシーに乗りました。家じゅうの時計が五分進んでいたのに、台所の時…
自衛隊の災害派遣でひと月を過ごした避難所。体育館の壁に増え続けた数字を書いていたのは、初日にトラックへ石を投げた二十歳の青年でした。撤収の日に拡声器を握った彼と…