娘が神様に出した十七文字
四歳の娘が急に字を習いたがった理由は、神様への手紙を書くためでした。徳島の藍を建てる家で、去年の秋に夫を亡くした母が、開けられずにいた藍甕の蓋の裏に見つけた一枚…
四歳の娘が急に字を習いたがった理由は、神様への手紙を書くためでした。徳島の藍を建てる家で、去年の秋に夫を亡くした母が、開けられずにいた藍甕の蓋の裏に見つけた一枚…
淡路島・江井の線香屋の家で、五つの長女が母の車に覚えたてのひらがなを刻みました。釘だと思っていた傷の幅は、私が胸ポケットに入れていた歯の欠けた櫛と、ぴたりと同じ…
葬儀の朝、腰まであった娘の髪が肩より上で切られていました。お洒落なママとのお別れやもん、と娘は言います。棺に添えられた細い髪の束の意味を、私は七年のあいだ思い違…
妻を見送って七ヶ月、四歳の誕生日を境に娘がぱったり泣かなくなりました。ばあばと約束したと言いますが、義母は知らないと言います。風呂の湯を足す音の意味に父が気づく…
実家のアルバムは中学二年の夏で写真が途切れ、そこから先は白いままの台紙だった。二十三の私を写真館に連れて行き、赤に黒の振袖を撮らせた母が「私の宝物」と呼んだもの…
五歳の夏、海辺の小さな町で自転車屋を営む父が、ひとりで大切に育ててきた娘の七海が、何の前ぶれもなく逝きました。父が冬じゅうかけて組み直した赤い自転車、四百二十円…