父の最期と再会

公開日: ちょっと切ない話 | 家族 |

花

私の家族は複雑な関係を持っており、両親は離婚後、別々の生活を送っています。私は三姉妹の末っ子で、唯一定期的に父を訪ねていましたが、姉たちは父とはほぼ十年間会っていませんでした。

今年に入り、父から突然の電話がありました。「わいな、癌やったみたいや。大丈夫。医者も治るってゆうとるから」と父は言いました。この知らせに動揺し、私はすぐに父の元へ向かうことにしました。

訪れた日、父は祖母と二人で暮らしている家で、病床に伏していました。苦しげな様子の父が、私を見て「よう来たな」と微笑みました。その日、私たちは共に食事をし、話をし、笑い合いました。父は「わいな、あと三ヶ月の命やねんと。でも、お前と約束したドライブや釣りに行きたいから、絶対に治すわ」と力強く語りました。

しかし、父の容態は急速に悪化し、数日後には病院に入院してしまいました。再び会ったとき、父は「ゆきのこと待っててんで」と嬉しそうに話しました。そして、かつて会っていなかった姉と彼女の子供、私の甥とも再会し、父はその幸せを噛みしめるようでした。

家族は交代で父の看病をし、私たちは父の最後の日々を共に過ごしました。父は最期まで家族の愛に包まれ、平和に息を引き取りました。死に顔を見たとき、まるでいつものように話し始めるかのようでしたが、永遠の別れを告げる時が来ていました。

父の死後、親戚から「お父さんはいつもお前たちのことを思っていたんだよ」と言われ、その言葉は私の心に深く刻まれました。父の無償の愛を感じ、もっと彼と時間を共有できなかったことに対する後悔と感謝の気持ちが溢れました。

父よ、これまで本当にありがとう。あなたの愛は私たちの心の中に永遠に生き続けます。

関連記事

母猫(フリー写真)

母猫の選択

Rの実家は猫好きな一家で、野良猫に餌をあげているうちに、家中猫だらけになってしまったそうだ。 住み着いた猫が仔を作り、その仔もまた仔を作る。 一時は家庭崩壊しかけたほど猫が…

宮古島

沖縄の約束

母から突然の電話。「沖縄に行かない?」と彼女は言った。 当時の私は大学三年生で、忙しく疲れる就職活動の真っ只中だった。 「今は忙しい」と断る私に、母は困ったように反論して…

雨の日の紫陽花(フリー写真)

いってらっしゃい

もう二十年ほど前の話です。 私が小さい頃に親が離婚しました。 どちらの親も私を引き取ろうとせず、施設に預けられ育ちました。 そして三歳くらいの時に、今の親にもらわれた…

病院(フリー背景素材)

二つ目のセーブデータ

ゲームボーイの『Sa・Ga2 秘宝伝説(以下、サガ2)』は思い出のソフトなんだ…。 今でもよく思い出しては切なくなっています。 ※ 俺さ、生まれた時から酷い小児喘息だったのよ…

夕焼け(フリー素材)

大きな下り坂

夏休みに自転車でどこまで行けるかと小旅行。計画も、地図も、お金も、何も持たずに。 国道をただひたすら進んでいた。途中に大きな下り坂があって、自転車はひとりでに進む。 ペダル…

カップル(フリー写真)

二人の幸せ

私は現在20歳です。 今付き合っている彼氏とは、去年の夏にナンパされて知り合った。 彼氏の見た目はいわゆるチャラ男で、それなりに遊んでいる感じ。 絶対好きになんてなら…

浜辺を走る親子(フリー写真)

両親は大切に

人前では殆ど泣いたことのない俺が、生涯で一番泣いたのはお袋が死んだ時だった。 お袋は元々ちょっと頭が弱くて、よく家族を困らせていた。 思春期の俺は、普通とは違う母親がむかつ…

ちまきと柏餅(フリー写真)

ロクな大人

この前の、子供の日。 夫の親、兄弟、親戚、一同が集まった席で、いつものように始まった大合唱。 「一人っ子は可哀想」 「ロクな大人にならん」 「今からでも第二子は…

駅のホームに座る女性(フリー写真)

貴女には明日があるのよ

彼女には親が居なかった。 物心ついた時には施設に居た。 親が生きているのか死んでいるのかも分からない。 グレたりもせず、普通に育って普通に生きていた。 彼女には…

アスレチックで遊ぶ双子(フリー写真)

兄ちゃんはヒーローだった

兄ちゃんは、俺が腹が減ったと泣けば、弁当や菓子パンを食わせてくれた。 電気が点かない真っ暗な夜は、ずっと歌を唄って励ましてくれた。 寒くて凍えていれば、ありったけの毛布や服…