
あなたが天国に足早に旅立って、もう十二年になります。
あのとき二歳だった娘も、
生まれたばかりだった息子も、今ではすっかり中学生です。
泣き声ばかり聞かせていた赤ちゃんが、制服を着て学校に通っているなんて、あなたが聞いたらきっと驚くでしょうね。
※
あの日からずっと、私は自分を責め続けてきました。
あのとき、何かできたんじゃないか。
こうしていれば、もしかしたらあなたはまだ生きていたんじゃないか。
そんな「もしも」のことばかり、頭の中で何度も何度も繰り返しました。
あなたの家族からは、
「私たちなら救えたのに」
そんな言葉も浴びせられました。
なぜ私だけが、こんなにも責められなければならないのか。
なぜ私だけが、こんなにも苦しまなければならないのか。
心も身体も、ズタボロでした。
※
何度も、何度も、あなたを追いかけていこうと考えました。
もう全部終わらせてしまいたい、と真剣に思った夜もあります。
それでも、私の前にはいつも、笑顔で「ママ」と呼んでくれる二人の子どもがいました。
熱を出せば不安そうに私の手を握り、転べば涙目で抱きついてくる。
「ママがいないと困る」と、言葉にならない言葉で、必死に伝えてくる小さな手がありました。
その小さな手を振りほどいてまでは、どこにも行けませんでした。
気がつけば、私はただ無我夢中で、この十二年を走り抜けてきました。
※
今振り返ると、私の中で一番大きかったのは、悲しみよりも「怒り」だったのかもしれません。
かわいい子どもたちの成長も見ずに、先に逝きやがって。
入学式、運動会、卒業式。
夫婦が並んで子どもを見守る姿を目にするたびに、胸の奥がじくじくと痛みました。
子どもが体調を崩して不安なときも、
子育てに行き詰まって、自分を責めて泣きたくなったときも、
「あなたがいてくれたら」と、何回、何百回、心の中でつぶやいたか分かりません。
置いていきやがって。
……あほ。
そうやってあなたに八つ当たりしながら、私はなんとか立っていました。
※
そんな私に、十歳になった娘が一通の手紙をくれました。
「ママが元気でいてくれれば、私はいいです」
たったそれだけの短い言葉だったけれど、その一文を読んだ瞬間、堰を切ったように涙があふれました。
子どもたちなりにも、きっといろいろあったはずです。
寂しさも、不安も、周りからの心ない言葉も、きっと感じてきたはずです。
それでも二人は、何一つ私を責めることなく、
「パパいないけど、うちは幸せだよね」
と、何度も何度も、二人そろって言ってくれました。
そのたびに、胸がぎゅっと締めつけられるようでした。
こんなに良い子たちを残して、あなたはいったい何をそんなに急いで、先に走っていったの。
※
私は決めました。
この子たちを、私の人生をかけて幸せにする。
あなたの分まで、しっかりと守って、愛して、育てきる。
だからあなたは、そちらから精一杯見守っていなさい。
入学式も、運動会も、卒業式も、姿は見えなくても、ちゃんと見ているんでしょう?
私が一人で頑張っているように見えても、実はずっと、後ろから支えてくれているんでしょう?
そう信じて、これからも前を向いて生きていきます。
※
あなた、二人の子どもを私に授けてくれて、ありがとう。
たくさんの人がいる中で、私と出会って、私を選んでくれて、ありがとう。
支えきれなくて、ごめんね。
もっと上手に甘えさせてあげられていたら、と今でも思うことがあります。
それでも私は、あなたと過ごした日々も、残された十二年も、全部ひっくるめて、大切な宝物だと思っています。
私がそちらに行ったら、まずは一発パンチな。
思いきり文句を言って、そのあとで、思いきり抱きしめてね。
その日まで、もう少しだけ、ここで頑張っているから。