これで仲直りしよう
昨日の朝、女房と喧嘩した。と言うか酷いことをした。
原因は、夜更かしして寝不足だった俺の寝起き悪さのせいだった。
「仕事行くの嫌だよな」
と呟く俺。
そこで女房が何を言っても俺は切れただろう。前例もあったし。
あいつもそれをよく知っているから、何も言わなかった。
それも解っていたけど、何だか馬鹿にされているような気もして、八つ当たりしてしまった。
凄く美味そうだったのに、折角あいつが作ってくれた味噌汁もおかずも、全部ぶちまけて暴言を吐いてしまった。
あいつは泣きながら、鍋に残った味噌汁を流しに捨てていた。
物凄く後悔したけど、用意してあった弁当も持たず、虚勢を張ったまま謝りもしないで、俺はそのまま会社に出掛けてしまった。
※
夜になって、気まずい思いを抱きながら帰宅した。
もしかしたら女房は実家に帰っているかもしれないと、内心不安だった。
しかし部屋の明かりは灯っている。しかも何やら良い匂いもする。
思い切ってドアを開けると、女房は俺の好物のビーフシチューの鍋を抱えて出迎えてくれた。
「これで仲直りしよう」
と笑顔で。
俺の方こそ、朝のお詫びに気の利いた土産の一つや二つ買って来るべきだったのに。
もう自分の勝手で女房に八つ当たりをしないと心に誓った。
本当はあの味噌汁食いたかったんだ。俺は。